日本ではありえないけど、アメリカならあってもおかしくない、人種に絡んだ出来事を描いた数奇な物語。やっかいな問題が起きたとき黒人の若者はこんな発想になるんだ、というのが分かってなかなか興味深いです。60点
友情にSOSのあらすじ
黒人の大学生ショーンとクンレは今夜こそパーティーをはしごする全制覇ツアーを達成しようとしていた。それによってはじめて黒人の生徒としての伝説を残そうとしていた。
ところがパーティーに行く直前、家に寄るとドアが開いていて、そこに知らない白人の女の子が床に倒れているところに遭遇する。
家にいたルームメイトのヒスパニック系の学生カルロスになにがあったのか聞いても彼もその子のことを知らないようだった。どうやら女の子が勝手に家に入ってきては意識を失ったようなのだ。
真面目なクンレは警察を呼ぶように提案したが、ショーンは黒人とヒスパニックの男3人の家で白人の女の子が気絶しているところに警察を呼んだらどんなふうに思われるか想像がつくといって反対した。
そこでショーンとクンレとカルロスの三人は車で白人の女の子を病院にまで連れて行こうとするが、、、、
友情にSOSのキャスト
- RJ・サイラー
- ドナルド・エリース・ワトキンス
- セバスチャン・チャコン
- サブリナ・カーペンター
- マディー・ニコラス
友情にSOSの感想と評価
キャリー・ウィリアムズ監督による、卒業前のマイノリティーの大学生たちに起こった不運な出来事を人種差別問題と絡めて描いたコメディスリラー。
ちょっとした笑いとちょっとした怖さをミックスさせたエンタメ映画でアメリカ社会の偏見と現実を絶妙に見せていくシチュエーション人種差別ドラマです。
もし、家に帰ったとき見知らぬ女性が床に倒れていたら?という状況から物語が本題に入り、本当なら「警察呼べばいいじゃん」で済む話なんですが、マイノリティであることと現場で酒やマリファナを所持していたなどから主人公の三人は後ろめたさを感じてしまい、間違った解決策を選択して問題をこじらせていく、というのがストーリーの流れです。
もちろん正解はすぐに911に電話をかけることでしょう。ただし、いざ警察がやってきて「家に帰ったら、この子が倒れていたんだ」などという説明を果たして白人の警官たちが信じてくれるかどうかは別の話なのです。
女の子がもし薬をやっていたら男たちが薬漬けにしたなどと言われるかもしれません。もし女の子がそこにたどり着く前に怪我でもしたら暴行を加えた容疑をかけられるかもしれません。さらに女の子が未成年だったなんてことが後から発覚したら罪が余計に重くなるでしょう。
そんなことを心配し始めると、三人はもう警察なんてとても呼べなくなってしまい、しかしこのままにしたら死んじゃうかもしれないからどうしたらいいんだろうか、というのが物語のテーマで、モラルと保身のはざまにゆれる若者たちの姿が喜劇とも悲劇ともいえそうです。
若さゆえの愚かさと、マイノリティーゆえの警察への不信感が重なってどんどんやばい方向に事件が進んでいくのはなかなか面白いし、いかにも映画的な部分とリアリティーを感じられる部分が混ざっていてそこそこ娯楽性はありました。
間違った選択をしてしまう三人なんだけど、根はみんないい奴らだから決して憎めない、というのもポイントでしょう。もし万が一女の子が命を落としたら責任問題で言ったら誰の責任になるんですかね。やっぱり女の子のお姉ちゃんかなあ。
女の子本人も酩酊していたとはいえふらっと他人の家に入っていくなんて自業自得ともいえるし、でもやっぱりすぐに緊急通報しなかった成人を過ぎた男たちにも罪が科されてもおかしくない話ですよね。そういう意味ではすごい上手な状況を作り上げたなあ、と感心しました。
文句をつけるとすれば、後半部分スリラーテイストが薄まっていくところですかね。なぜか後半に行くにつれて、あるいは重要な局面に差し掛かったときこそコメディーになってるんですよ。
それならむしろ最初はコメディーっぽく始まって後から笑いを一瞬で恐怖に変えるような、場を凍り付かせるような大幅な方向転換があってもよかったかもしれませんね。
どんどん取り返しのつかない方向に行って最後は誰かが撃たれて死ぬぐらいがちょうどいいんじゃないかなぁ。そうしないと人種問題を考えるきっかけにもならないと思うんですよ。最後なんだか丸く収めたところは好きじゃないです。本来ならバッドエンドにするべき映画です。
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