「アンブロークン」のアンジェリーナ・ジョリーが初監督した戦争映画。戦争中、敵同士となったボスニア人女性とセルビア人兵士による愛憎劇で、戦時中に負った女性の苦しみに焦点を合わせた女性目線の映画。38点(100点満点)
最愛の大地のあらすじ
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下の1992年、セルビア兵に捕まり収容所に送られたアイラ(ジャーナ・マリアノヴィッチ)は、女性としてのプライドをズタ ズタにされるような日々を送っていた。
そんな中、以前付き合っていた将校ダニエル(ゴラン・コスティッチ)から、肖像画の製作を依頼される。やがて二人の 間に愛が再燃するが、一方で戦況はさらに悪化していき……。
シネマトゥディより
最愛の大地の感想
なにかとアメリカ人に都合良く描かれた映画です。
これまで何度も言いましたが、英語圏でもない出演者に英語を喋らせている映画にろくなものはありません。「コレラの時代の愛」、「5デイズ」、「SAYURI」などがそれに当たります。
みんな不慣れな片言の英語で喋っているから、感情移入ができず、無理してる感がぬぐえません。また、ここぞという言い合いのシーンで何を言ってるのかよく分からなかったり、出演者によってはかなり英語が危なっかしい人がいて、もうストーリーどころじゃないのです。
アンジェリーナ・ジョリーはこの映画についてあるインタビューでこう言いました。「実際に物語が起こった場所以外で撮影しようとは思わないし、現地の俳優以外を起用してこの映画を撮ろうとは思わない」。
そんなことを言いながら全編英語にしているというこの矛盾。単純に英語にしたほうが字幕を読めないアメリカ人が見やすいから、世界的にもマーケティングがしやすいからという、中国人のインターネット商戦みたいな頭で映画を撮っているのが許せません。
この映画は英語の他にもボスニア語バージョンでも撮影されたらしんですが、市場に出回っているのはほとんど英語でしょう。悲しいですね。
この映画の製作中にアンジェリーナ・ジョリーは有名なセルビア人プロデューサーに協力を頼んで断れたらしいです。というのもストーリー自体が一方的にセルビア人を悪と決め付けているからです。
これもハリウッドがよくやる手法です。たとえば「パールハーバー」みたいな映画をアメリカ人が撮って、アメリカを英雄と描くのはまだ許そう。自分の国、国民の目線で描くんだからそれは仕方がない。でもこの映画のように第3者が余所の国の戦争に勝手に善悪を付けるのはあまりにも危険だと思いますね。ずうずうしいって。
劇中ではセルビア兵がボスニア女性たちを盾にして、戦場に向かったシーンや捕虜に暴行を加えるシーンなどが強調されていて、目を覆いたくなります。
そんな中、将校ダニエルは捕虜であり、元恋人のアイラだけを特別扱いし、二人は恋に落ちます。しかしこの二人の恋がまたその日の気分や状況によって態度が急変するツンデレの関係で、戦時中だから私たちの気持ちも複雑なんですから、といわんばかりで面倒くさかったです。
友達にボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を経験したクロアチア人がいるんですが、彼はいつも口癖のようになにかといえば戦争について語っていました。それだけ深いトラウマになっていたのでしょう。
散々この戦争について彼から聞かされたものの、結局この戦争の本質や民族間の対立の原因などは全く理解できませんでした。それは日中、または日韓の問題を彼らに説明するのと同じ次元のことだと思います。
結局余所の国の人になんかわかるわけがないのです。それをアンジェリーナ・ジョリーはなにを血迷ったのか、こんな映画にしてしまって。こんな映画を撮るより、お前とブラッド・ピットとのツンデレの関係を描けって。あ、もう無理か。
コメント
こんにちは。
とても共感できる記事でしたので、コメントさせていただきます。
アンジーはこのような勉強不足からの映画を公開して、さんざんバッシングを浴びたにもかかわらず、同じことをまた新作映画「Unbroken」で繰り返そうとしていてあまりの思い上がりぶりにイライラします。
セルビア人の友人を持つ者のひとりとして、このような一方的にセルビア人を悪とするような映画を世界に発信した彼女にはがっかりです。
Murasakiさん
コメントありがとうございます。セルビア人のお友達がいるとのことで、そういった友人からも意見を聞くとまた違った話が聞けそうですね。
>ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争関連の映画でおススメは
>マイケル・ウィンターボトム監督の「ウェルカム・トゥ・サラエボ」です。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を題材にした映画と言えば、「ノーマンズランド」がありますが、ご覧になられましたか?
監督がボスニア紛争の被災者なので、戦争自体が悪だと言う事をしっかり描かれていました。
丸刈りーたさん
今度ノーマンズランド、ぜひ見てます。ありがとうございます。