スポンサーリンク

最後の決闘裁判はクズ男の戦いを描いた面白い作品!ネタバレ感想

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています
※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています
この記事は 約6 分で読めます。

男と女ではこうも一つの出来事が違って見える、というのを上手に表現した性犯罪ドラマ。衝撃の実話です。72点

スポンサーリンク

最後の決闘裁判のあらすじ

キャロライン戦争を戦い終えたノルマンディーの騎士ジャン・ド・カルージュと親友で従騎士のジャック・ル・グリはピエール伯に忠誠を誓った。

ジャン・ド・カルージュは当初、広大な土地をピエール伯からもらうことを約束されていたが、いつの間にか約束は反故にされ、その土地はジャック・ル・グリに与えられ、二人に対し不信を強めていく。ジャン・ド・カルージュは自分の権利を主張するために二人を訴えるもそれによって立場が危うくなっていく。

訴えられたことに腹を立てたピエール伯は、カルージュ3世の死に伴い空席となった城塞の長官職を息子のジャン・ド・カルージュではなく、ジャック・ル・グリに与え、一層ジャン・ド・カルージュと距離を置くことにする。

金銭的に困っていたジャン・ド・カルージュは土地と持参金目当てに地主で金持ちの美人娘であるマルグリットと結婚。二人は幸せな結婚生活を送っているかのように見えた。

しかしジャン・ド・カルージュがスコットランド遠征に参加し、給金を得るために城を開けると、一人で留守番をしていた妻のマルグリットがジャック・ル・グリに乱暴される事件が起こる。妻の主張とは裏腹にジャック・ル・グリは暴行を加えたことを完全に否認した。

これに激怒したジャン・ド・カルージュは国王のシャルル6世に直訴し、決闘裁判で決着をつけることにする。

最後の決闘裁判のキャスト

  • マット・デイモン
  • アダム・ドライバー
  • ジョディ・カマー
  • ベン・アフレック
  • ハリエット・ウォルター
  • アレックス・ロウザー

最後の決闘裁判の感想と評価

【読者のきのこさん、ほたこさんのリクエストです。ありがとうございます】

エイリアン」、「ブラック・レイン」、 「オデッセイ」、「エイリアン・コヴェナント」、「悪の法則」、「ゲティ家の身代金」、「レイズド・バイ・ウルブス」のリドリー・スコット監督による西洋時代劇。ノンフィクション「決闘裁判世界を変えた法廷スキャンダル」を基にした、ある女性の身に起きた強姦事件をめぐる男たちの戦いです。

脚本、ストーリー構成が見事で演技も素晴らしいです。特にマルグリット役のジョディ・カマーは賞に値するパフォーマンスだったと思います。

序盤、カットが雑で随分飛び飛びで話が進んでいくなあ、と気になったものの、三部構成になっているためのんびり進んでいる時間がない、ということが途中で分かって納得がいきました。

文句をつけるとしたら、フランスが舞台なのにフランス語じゃないところと、出てくる男が全員ゴミだということぐらいでしょうか。それ以外はほぼ全てハイクオリティでした。それでも興行的には赤字らしいですね。ちょっと信じられないです。

騎士のジャン・ド・カルージュ、友人のジャック・ル・グリ、カルージュの妻のマルグリットの視点で、それぞれの解釈のもと同じ出来事を描いているんですが、モチーフとなっているのは黒澤明の「羅生門」です。

同じ出来事とは、美人妻マルグリットがル・グリに性的暴行を受けた前後の経緯で、それぞれが全く違った感覚で一つの事象を捉えているのが興味深いです。

特に男二人は、マルグリットが心底自分を愛していると都合良く錯覚しているのがポイントで、女性の気持ちを全然分かっていないのがリアルでした。

夫のカルージュは、マルグリットを自分に富と子孫を残してくれる相手としかとらえていません。にも関わらず自分たちは愛情溢れる夫婦だと勘違いしているところが痛々しく、自分の無神経さや傲慢さに気づいていません。

対するル・グリは、自分がイケメンでフランス中でブイブイ言わせていることをいいことに、自分が気に入った女性は当然自分のことも気に入っているはずだ、と勘違いし、人妻のマルグリットにも「どおせお前も俺のことが好きなんだろう」的な態度で言い寄ります。そしてあろうことか断って逃げ惑う彼女を犯してしまうのです。

マルグリットからすると、カルージュもル・グリも全く自分の気持ちを考えてくれないクズ野郎で、夫は最初から財産と跡取り息子を作ることが目当てで自分のことなどまるでお構いなしです。

対するル・グリはちょっと知り合っただけで一方的に惚れられ、マルグリットも同じ気持ちだろうなどと勘違いも甚だしく、本気で断っているのにそれを「嫌よ嫌よも好きのうち」と解釈されてしまう始末です。

特筆すべきは、マルグリットは階段を上る際に靴を強引に脱がされたのにル・グリ目線ではあたかもマルグリットが自分から脱いだことになっている点ですね。

マルグリットは本気で叫んで断っているのに、ル・グリ目線では、彼女は建前上断っているだけで本当は同じことを望んでいると映っていた、というのも怖い話です。

もしやマルグリットもル・グリのことが好きだったんじゃないのか、などと一瞬でも思ってしまった自分が恥ずかしいです。

自分から靴を脱いだし、笑顔で楽しそうにしてるし、まんざらでもないな、などと思って強引にやってしまうのが身勝手な男の行動そのものでしたね。

ル・グリはあれだけ愛してるって言ってたくせに事が終わると、さっさと帰ってしまうのもゲスですねえ。そのうえ「旦那にこのことは言わないほうがいいよ、お前が殺されるから」だって。愛情のかけらもないじゃん。

カルージュもカルージュで自分の妻がル・グリに乱暴されたことを知ると、妻を疑ってかかり、あろうことかル・グリに抱かれたままにしておけるか。今から俺がお前とやるからこっちへ来い、などと言ってベッドに連れて行こうとするのです。マルグリットからしたら絶望的なバカ男二人に関わっちゃったなあ、という状況ですよね。

そんなクズ二人が正義をかけて最後に決闘をするんですが、マルグリットからしたら二人とも死ね、というのが本音だったんじゃないでしょうか。もはやどっちが勝っても誰も救われない話になっていましたね。それでも建前上、妻は夫を応援しないといけないだろうし、なんだか気の毒な話です。

それにしても、もうどっちの言い分が正しいか分からないから決闘して勝ったほうが正義ね、っていうのも時代とはいえ、ものすごい雑ですよね。そんなノリなら裁判とかいらないじゃん。

あの決闘シーンはアクションとしては迫力があって面白かったです。とどめを刺すシーンはなかなかのグロさでインパクトも十分でしたね。ほかの戦闘シーンも全部格好良く撮れていて娯楽性も十分にあります。

1300年代の話だけど、性犯罪の被害者が一時被害、二次被害に遭い、女性たちからも白い目で見られ、裁判では自分の責任を問われ、ありとあらゆる屈辱を受ける、というのは現代にも通じるものがありますね。

そういう意味では時代劇でありながら、#metoo運動映画という印象を受けました。そしてなぜか現代の話よりもこっちのほうがむしろ被害に遭った女性の苦しい立場を分かりやすく伝えていますね。153分と長いんだけど、ものすごい見ごたえのある作品でした。リドリー・スコット監督は久々にいい映画を撮りましたね。

コメント

  1. きのこ食べ過ぎ より:

    最後の「決闘シーン」が迫力あるだけで、それが無かったら普通に駄作だと思いますよ。「悪の法則」も似た様な感じじゃないですか、最後の暗殺シーンだけ迫力あるけどストーリーテリングはグダグダで。
    今作は、「悪の法則」と対照的に、ストーリーは明解なんだけれど、内容の被ったストーリーラインを3本にしたせいで、結局人間描写が薄っぺらくなるというデメリットの方が勝ってしまったという事じゃないですか。
    #meetoo要素を入れるのもいいんだけれど露骨過ぎじゃないですか。あのド左翼監督のケン・ローチですら「ストーリーより政治的メッセージを優先させすぎると、単なるプロパガンダ映画になってしまう」と言っていますし。
    この監督、元々CM上がりだから、ストーリーより「画」至上主義なんですよ。「ブレードランナー」とか「ハンニバル」とかみんなそんな感じじゃないですか。

  2. アクション より:

    同時期のハロウィンKILLSの方が悪人善人クズ関係なく殺しまくるマイケルだったので客はそっちに行ったようです。まぁクズ男達と振り回される女性の悲劇と男女混合自警団対マイケルなら分かりやすいマイケルの方に行きますよねとしか・・・
    てかクズ男を楽しむってそれ既存のキャラに飽きてるオタクの楽しみ方だから一般とは売れ方が違いますよ。

  3. ほたこ より:

    リクエストに応えていただきありがとうございました!

    自分は2幕目冒頭で一気にこの映画に引き込まれました。勇猛に戦ってる風だったカルージュも側から見たらただの迷惑な暴走野郎じゃんっていう。笑

    このようにな仕掛けが全編通して散りばめられていたので、基本的には同じ話を繰り返しているんですが飽きずに見ることができました。

    • 映画男 より:

      リクエストありがとうございました。やっぱり2幕目から楽しくなりますよね。男社会で、男たちがどれだけ身勝手に生きてきたかを皮肉っていたのがよかったですね。

  4. Ishimami より:

    女性の立場が男性より圧倒的に低い中性に、自ら乱暴されたと声を上げたヒロインというのは今の時代に通じていて この話を知らなかった私はおお!と思いました。

    ですが、書いてらっしゃる通り、英語で、それもこんなに有名な役者を使ってしまったのが、私にはどうしてもノレない作品となってしまいました。例えるなら、チャイニーズが中国語で、本能寺の変を演じてる感じ。

    また、ベン アフレックに関しては、フランス人に見せようともしてない出立ちで、不埒な貴族役を『ゲームオブスローン見て勉強してきました!』的な張り切りようで、見ていて恥ずかしかったです←私の中で、ラズベリー賞決定! 途中挟まれた、黒馬が白馬に後ろから交わろうとする分かり易すぎる比喩シーンも鼻白んでしまいました。

       リドリースコットはアダムドライバーを気に入ったんのでしょうね。最新作のHOUSE OF GUCCI。こちらはドライバーも作品自体も大好きでした。