極悪企業の実態が知れる社会的意義のある作品。一般市民が知らぬ間に企業から殺されることも普通にあるんだな、というのが分かる驚愕の実話です。58点
ダーク・ウォーターズ巨大企業が恐れた男のあらすじ
ある日、企業法務弁護士のロバート・ビロットのもとに農夫のウィルバー・テナントが相談に来る。ウィルバー・テナントはロバートの祖母と知り合いで、彼なら助けてくれると思って藁にすがる思いでやって来たのだった。
ウィルバーによると、化学メーカー、デュポン社せいで彼の農園の牛が次々と病気になり、死んでいっているという。ウィルバーはその証拠を収めた大量のビデオテープをロバートに渡したが、ロバートは自分は企業を守る側の弁護士だからロバートを弁護できないと断った。
しかしなにか心にひっかかるものがあったロバートは後日、ウィルバーの農園を訪問することにする。そこで彼は190頭もの牛が死んだ悲惨な状況を目の当たりにする。ロバートはデュポン社の弁護士フィル・ドネリーに事情を尋ねたが、はぐらかされるばかりで話にならなかった。
そこでロバートはデュポン社に対し、訴訟を起こす。最初は小さな訴訟だと踏んでいたロバートだったが、周辺住人の話を聞いていくうちにデュポンが廃棄していた化学物質によって甚大な健康被害が出ていたことを知り、唖然とする。
ダーク・ウォーターズ巨大企業が恐れた男のキャスト
- マーク・ラファロ
- アン・ハサウェイ
- ティム・ロビンス
- ビル・キャンプ
- ヴィクター・ガーバー
- メア・ウィニンガム
- ビル・プルマン
ダーク・ウォーターズ巨大企業が恐れた男の感想と評価
「アイム・ノット・ゼア」、「キャロル」などで知られるトッド・ヘインズ監督による対企業訴訟ドラマ。
テフロンを発明したデュポン社が工場付近に化学物質を垂れ流して地域住民の健康を被害を出しておきながら、長い間それを黙認していた、という恐ろしい実話です。
終始、シリアスで重いトーンで進んでいくので、気持ちがげんなりするのはまず避けられないタイプの作品です。ユーモア、感動一切なし。それでも自分の身に起こってもおかしくないこととして誰もが知るべき出来事だと思います。演技はいいし、脚本もサスペンス風に仕上げてあって、見やすい訴訟ドラマになっていました。
ジャンルでいうと、「MINAMATA」や「エリン・ブロコビッチ」と同じですね。
金儲け主義の企業が人々の命を軽視し、利益を追求し続けた結果、大規模な訴訟に発展し、それすらも金で解決する、という吐き気のする話です。
いわば権力者VS弱者の戦いで、常に権力者の都合のいいように世の中のルールが決まり、法律なんてあってないようなものなんだなあ、というのがよく分かります。
問題となったのは、フライパンなどに当たり前に使われているテフロンの製造過程でPFOAことペルフルオロオクタン酸という有害な化学物質をデュポンが使用していただけでなく、川やダムに廃棄していたことです。結果、何千人もの地域住人が癌などの重病にかかったんだそうです。
飲み水にも含まれていたので地域住人の歯は真っ黒になり、デュポン社でテフロンを扱っていた女性社員たちからは奇形児が生まれ、多くの人々が癌になって亡くなりました。それでもデュポンは見て見ないふりをしていたって、ありえないですね。
もしこの訴訟が行われなかったら、今もなおデュポン社は汚染物質をダムや川に流し続けていただろうし、ウェストバージニア州だけでなく、世界中で被害が広がっていたことでしょう。そんな企業がまだ存続して普通に活動しているのが嫌ですね。
不思議とこれだけ被害が出ても刑事裁判にはならないみたいです。企業が人を殺しても民事で解決できてしまう社会の構造がよく分からないです。とにかく金はあるから権力者たちを自分たちの味方にできるし、裁判を妨害するためならいかなる手段も使い、被害者たちが泣き寝入りするのを目論む、というのがデュポン社のやり方のようです。
裁判では被害者たちが勝利して和解金を積まれるんですが、医療費の高いアメリカにおいて癌治療なんかしたら数十万ドルぐらい平気で吹っ飛ぶんじゃないでしょうか。そしたら高額の損害賠償を受け取っても結局被害者の手元にはなにも残らないってこともありそうです。もらえないよりはもちろんましだけど、なんだかやるせないですね。
本作では実際の被害者で顔に奇形を持つバッキー・ベイリー本人が出演していたり、地元住民が登場したりとリアリティーは申し分なかったです。その点では「MINAMATA」となんて比較対象になりません。
マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ、ティム・ロビンスあたりもいい仕事をしていました。マーク・ラファロはプロデューサーも兼ねていたようです。
あわよくばデュポン社の幹部たちも実名顔出しで本人たちを登場させたらよかったんですけどね。ハンディカメラでゲリラ的に撮影してね。世の中のクズたちはもっと晒者にしないと。
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