ありそうで、なかった斬新なアイデア満載のホラー映画。ストーリー、演技、演出、オチのバランスがいいです。60点
ビバリウムのあらすじ
若いカップルのジェマとトムは住むところを探していた。ある日、ふらっと立ち寄った不動産会社のオフィスで彼らはマーティンという名の気味の悪い店員に話しかけられ、半ば強引に家を見に行くことになる。
車を走らせて三人が向かったのはヨンダーと呼ばれる郊外にある住宅地だった。そこには全く同じ色と形をした一軒家が何軒も並んでいた。不思議と人々の往来はなく、静かだった。
マーティンに促されてジェマとトムは9番の家の内部を見学すると、中庭や子供部屋まで用意されているファミリー向けの一戸建てであることが分かった。
悪くはなかったが、マーティンをはじめ、その場所自体の気味の悪さはぬぐえなかった。すると突然マーティンの姿がなくなり、ジェマとトムは家に置き去りにされてしまう。
二人はその機会にヨンダーを去ろうとするが、車をいくら走らせてもまた9番の家の前に戻って来てしまうのだった。
ビバリウムのキャスト
- イモージェン・プーツ
- ジェシー・アイゼンバーグ
- ジョナサン・アリス
- ダニエル・ライアン
- セナン・ジェニングス
ビバリウムの感想と評価
ロルカン・フィネガン監督による、アイデア満載の斬新なホラー映画。ある日、ふらっと不動産の内部見学に訪れたカップルが、その場所から出られなくなり、無理やり家に住まされる、という気持ち悪い系の話です。
なんともいえないシュールさと不気味さを混ぜ合わせたという点においては、「トワイライトゾーン」と同じ系統のホラーといえそうです。
誰かが刺されたり、血が飛び散ったりすることは一切なく、フィジカルな怖さよりも、あくまでもメンタルを疲弊させるようなストーリーになっていて、心理ホラーが好きな人におすすめできます。
なにより本題に入るのが早く、わずか10分で世にも奇妙な住宅地にたどり着くので、視聴者は無理なく物語の中に引き込まれることでしょう。
そして住宅地を脱出できなくなってからの展開もなかなかで、次々と気持ちの悪いストーリーを投入することに成功しています。
強制的に生活させられることになった新居での生活は無機質でモノトーンです。隣人は一人もおらず、もちろん店も娯楽もありません。
彼らの下には定期的に食べ物や物資が送られてきては、それを消費してただ時間を過ごすだけの日々なのです。
そして挙句の果てには赤ん坊まで送られてきて、仕方なく二人は赤ん坊を育てることになるんですが、その子がまた極端に気持ち悪く育ってしまい、カップルは日に日に精神を病んでいく、というのがストーリーの流れになっていました。
本来可愛いはずの子供を、殺意が芽生えるほどやっかいなキャラクターに仕上げてるのはすごいですね。彼の声や喋り方、そして行動の数々がいちいち腹立つし、あんな子と四六時中一緒にいたら気が狂うのは間違いないです。
そしてその子をさらに上回る気持ち悪いキャラクターが不動産屋の店員マーティンでしょう。あの演技、演出は衝撃的でしたね。喋り方、顔、動き、表情、髪型、雰囲気が全部キモくて最高なんですよ。間違いなく本作のMVPですね。
マーティンが出てきた時点で、この映画の勝負が決まった感があって、できることならもっと登場して欲しいぐらいでした。
本作が特殊なのは敵が誰だが分からない点にあります。ホラー映画はえてして殺人鬼やお化けといった分かりやすい敵がいるものだけど、そういうキャラクターが全く出てこないんですよね。
強いていえばマーティンだったり、送られてきた子供だったりするんだろうけど、直接的に攻撃してくるわけではないので、また違うんですよね。
つまるところ夫婦は見えない敵によって、人生をもてあそばれ、子供まで育てさせられ、ただただ消耗していく、という変わった拷問の被害者となります。そこに面白味を見出せる人はこの映画にはまるでしょうね。
全体を通して見ると、ループホラーともいえる構造になっているんですが、そこにもまた斬新さがあります。ループはループでもただ時間や同じ出来事を繰り返すループではなく、登場人物が巨大な仕組み、あるいはサークルの一部として組み込まれていき、それが永遠と繰り返される印象です。
この作品に文句をつけるとすれば、映像がセット&CG丸出しだという点でしょうか。特に住宅地はもっとやりようがなかったのかなぁ、という気がしました。あれで街並みがもっとリアルだったら、なおさら良かったんですけどね。
もちろん人工的に作られた街だから、雲や街並みもあえて人工的な映像にしたというのもあるでしょうが、なんか安っぽさを感じてしまいましたね。
あと、あんな状況下でカップルはやってたけど、あんな不健康な環境でやりたくなるかなぁ。それにしても子供が挿入のリズムに合わせて手を叩いてたシーンは鳥肌ものでしたね。あいつ、腹立つなぁ。
コメント
なんか優しくなりましたね
あら、そうですかね?
面白いんだけれど、もっと工夫の余地があったという印象。
舞台と登場人物が終始変わらないので、後半(ヒロインの彼氏の不調)あたりから若干退屈になってきた。
子供が短期間で成長するという設定なら、中学生ぐらいに成長したキモガキが、ヒロインに性的興味を示し始めるみたいな展開も入れた方が中だるみ感が薄れたと思う。