ブラジルが好きな人が見ればいい娯楽映画。ブラジル人は頑張ってるのにアメリカ人がひどい仕事をしているのが残念です。50点
バクラウ・地図から消された村のあらすじ
ペルナンブコ州の小さな村、バクラウでは携帯の電波や電力が落ち、ドローンが村人を追跡するなど、不審なことが次々と起こっていた。
また、近くの川の水の権利を巡ってバクラウ市民は市長のトニー・ジュニオルと争っていた。トニー・ジュニオルがダムを作って川の水をせき止めたせいでバクラウでは水の配給が困難になり、給水車によってなんとか水が送られていた。
トニー・ジュニオルが再選のためにバクラウを訪れると市民はたちまち身を隠し、彼のキャンペーンを阻止しようとする。
そんなある日、バクラウに向かう途中の給水車に何者かから銃弾が撃ち込まれる。同じ頃、バクラウの住民たちは夜中に近くの牧場の馬が歩いてくるのを目撃する。
住人が牧場に偵察に行くと、そこでは牧場の家族が全員惨殺されていたのだった。一体、誰が何の目的で、こんなことをしたのか。それ以来、バクラウでは次々と人々が殺されていく事件が発生する。
バクラウ・地図から消された村のキャスト
- ソニア・ブラガ
- ウド・キア
- バルバラ・コーレン
- トーマス・アキノ
- シウヴェーロ・ペレイラ
バクラウ・地図から消された村の感想と評価
クレベール・メンドンサ・フィリオとジュリアーノ・ドルネレスの共同監督による、ブラジルの架空の村を舞台にしたバイオレンスドラマ。結束力の強い村人と村人の命を狙う謎の組織との闘いをつづったドンパチ映画で、カンヌ映画祭にも出品されています。
ブラジルの田舎を舞台にした映画の中には実はなかなか良作が多く、「ビハインド・ザ・サン」、「私の小さな楽園」なんかはかなりおすすめです。
この映画がそれらに並ぶ良作かというと、微妙なところですが、そこそこのエンタメ性を含んだ、まあまあ見れるレベルです。
一方でブラジル国内ではちょっと話題になったかなぁ、というぐらいで、「シティ・オブ・ゴッド」や「エリート・スクワッド」といったヒット作と比べると、大ヒットしたとは言い難いですね。
物語の中に登場するバクラウは、まるで自給自足のコミュニティーのような仕組みで機能していて、村人たちは助け合いの精神で生活しています。
ただ、実際にそれぞれがどうやって生計を立てているかには触れておらず、ざっくりと水や基本食料の配給があり、気軽に住民たちの健康の相談を受けるドクターがいたり、男たちの性欲を満たす売春宿があったり、などとりあえず生活していくだけの環境は揃っている、という設定になっています。
そんな村である日、殺人事件が起こったのをきっかけに、村人たちが結束し、悪の組織を返り討ちにする、というのがストーリーの流れです。
要するに、これまでブラジル映画のネタで何度も使われてきた、ファヴェーラと呼ばれるスラム街のコミュニティーを田舎の村に移した話といえそうですね。
いつものパターンだと、ファベーラの住民VS警察ですが、この映画の場合は住民VS政治家が裏で操る白人殺し屋組織、といった構図になっています。
プロット自体はそれほど悪くはないんですが、この映画を台無しにしているのは、バクラウの一般市民を殺していく悪の組織にアメリカ人たちが関与している、という下りですね。
どう考えても、黒幕がアメリカ人をわざわざ雇うメリットがなく、あるいはアメリカ人がわざわざブラジルの田舎町にまでやって来て、無差別殺人をする理由がないんですよ。
白人至上主義者たちによる被差別民の虐殺とそれに対する住民の抵抗を描いているというふうにも言われているけど、それにしても辻褄が合わないし、殺しの目的がはっきりしない、あるいは曖昧にしているのがこの映画をダメにしています。
バクラウの住民を殺したければブラジル人の殺し屋を使ったらいいじゃん、って話なわけで、アメリカ人が招集されていることにかなりの不自然さが残ります。
また、アメリカ人俳優のレベルがもれなくB級で、まともな俳優たちを呼んで来る予算がなかったんでしょうね。
ブラジル人俳優たちはそれぞれ田舎にいそうな素朴で自然体な人が多く、かなりいい味出しています。バクラウのギャングのボス、ルンガなんて目が行っちゃってて平気で人を殺しそうな雰囲気があって迫力十分でした。この映画の評価に値するところといえばブラジル人俳優たちと、ブラジルを感じさせてくれる緩いエピソードの数々ですね。
それに対し、アメリカ人だけ演技が下手だし、ブラジルの田舎景色に馴染んでいないので絵的に浮いています。アメリカ人のリーダーの名前がマイケルって。ネーミングセンスもないよねぇ。マイケル役のウド・キアはそもそもアメリカ人ですらないしね。
マイケルが終盤に仲間まで撃ち殺す意味も分からないし、悪役たちの行動がいちいち理にかなっていないのが気になるところでした。
見せ場となるガンシューティングのシーンでは撃たれた人の頭が吹っ飛んだりする大げさなB級グロテスク路線を行っていて、安っぽい西部劇風になっているのが特徴です。細かいことはいいから白人の権力者VS貧しい住民の争いを見せようというのなら、もっとアクションシーンを充実させるべきでしたね。
つまるところ全体的には、映画館ではなく、DVDになってから見ましょうね、というクオリティーです。久々にちょっとだけ話題になったブラジル映画なので、ブラジル在住の僕的には楽しめた部分もあったけど、ブラジルびいきの人以外はスルーでもいいかもしれません。
コメント
現地政治家がアメリカ人を雇う必然性のなさが映画をダメにしていると言いますが、劇中でも何度か「観光客」という言葉が出ており、政治家が参加者であるアメリカ人からも金を貰ってハンティングゲームを提供し商売していることが推察できます。(気に入らない街も潰せて一石二鳥)
現実でも住民の意向を無視した政府による一方的な観光政策は存在し、この映画に必要な要素だと思います。
参加しているアメリカ人もただの富裕層ではなく、祖国で彼らなりに問題を抱えた人たちという描写もありますし、ウドキアーが欧州人ということにも触れ納得感があります。記事の内容は若干的外れに感じました。