登山家に対してのリスペクトが微塵も感じられない登山ドラマ。これを実話と言ったら、間違いなく怒られるレベルです。13点
中国映画クライマーズのあらすじ
1960年、ファン・ウージョウ率いる中国登山隊は人類初となるチベット側のエヴェレストの登頂を目指す。しかし登山の途中、カメラを持っていた隊員が仲間の命を救うためにカメラを手放してしまったことから、記録を残すことができなかった。そのせいでソビエト連邦をはじめ、中国の偉業は国際社会からは疑いの目を向けられた。
15年後、ファン・ウージョウは中国の汚名を返上するために、かつての仲間たちを登山隊を再結成し、再びエヴェレスト登頂を目指した。ところが二回目の登頂も吹雪や雪崩に襲われるなど、前回に匹敵するほど過酷な登山となった。
果たして中国登山隊はエヴェレスト登頂を二度も成し遂げることができるのだろうか。
中国映画クライマーズのキャスト
- ウー・ジン
- チャン・ツィイー
- チャン・イー
- ジン・ボーラン
- フー・ゴー
- ジャッキー・チェン
中国映画クライマーズの感想と評価
ダニエル・リー監督による、中国登山隊による実際の登山遠征の様子をリポビタンDのCMのようなトーンで描いた恥ずかしい映画。
登場人物、BGM、演出のどれもがうるさく、登場人物のオーバーなリアクションと、ダイナミックなハプニングのせいで、B級カンフー映画を見ているような感覚になってくる代物です。
中国政府から支援を受けているのか、終始中国をよいしょばかりしていて、中国人の勇敢さと情の厚さばかりが強調されます。お国のためとか、国の誇りとか、中国万歳みたいな暑苦しいセリフが飛び交い、プロパガンダにもほどがある内容に苦笑いするしかなかったです。
登山家の人たちが見たら、まあ怒るでしょうね。登山と政治をごちゃごちゃにするんじゃないよ、登山舐めんなよって言われても無理はないでしょう。
登山って経験と知識と技術がものをいうんだとばかり思っていましたが、この映画によると、いかなる困難も根性で全部乗り切れるんだそうです。だってエヴェレストを登頂するのに隊員たちが裸足になって肩車で登るんだからね。
なにもそんなところで中国雑技団しなくていいんだよ。ふざけすぎじゃない?
ストーリーの盛り上げ方が80年のカンフー映画から進歩がなく、演出が過剰すぎて、コメディになってるんですよね。
主人公のファン・ウージョウは普段からこんなことして指を鍛えてるんだって。なんでそこでやる必要よ。
登るのが好きすぎて、普段からこんなところにも登っちゃうそうです。
登山家をはき違えてないか? これじゃあ、「フリーソロ」でお馴染みのフリークライミングじゃないですか。
とにかく達人アピールがすごくて、登山家がいつの間にかカンフーマスターみたいな扱いになっているのが失笑ものです。
登山の訓練キャンプでやることといえば、体にタイヤを括り付けて走るとか、大きな木を持ちながら歩くとか、まるでロッキーのトレーニングみたいなで、世界観がごちゃごちゃすぎて収集がつかなくなっています。
また、登山映画のくせに山のシーンはほぼほぼCG頼りっていうのがいけませんね。白い吐息がほとんど見えないのは、寒いところで撮影していないからでしょう。
セット丸出しの映像にリアリティーがないから、応援する気にもなれないし、山で起こる出来事がいちいち大げさなんですよ。
雪崩が起きるのはまだ分かります。でもそのときに数十メートル大の岩がバンバン転がってきては、登山家たちがそれを避けながら崖に放り投げられてもピンピンしていたり、挙句の果てにはファン・ウージョウが女を守るために危機一髪のところで氷の岩を背中で受け止めてたからね。
落下してきた氷の岩をうぉーとか言いながら背負っちゃうんだから。うぉーじゃなしに普通に背骨折れるから。中国人はあれを見て笑わないんですか?
登山中の恋愛エピソードがいちいち不必要で、なんで生きるか死ぬかのときにあんなにあいつらはイチャイチャしてるんですか。
女性キャストたちは登山家なのにもれなく色白っていうのがさすがです。チャン・ツィイーなんて絶対山登りしたことねえだろっていうようなバチバチにメイクをきめて出てるんですよ。
男性キャストはイケメンを集めていて、同じく登山家の顔つきとは全く違ったモデル系の人たちが出演しています。
出演者で言ったら、一番ひどいのはジャッキー・チェンかもしれませんね。てっきりメインキャストなのかと思ってたら、ただの友情出演ってね。それもワンシーンだけね。ひどいわ、騙されたわ。
コメント
「少林サッカー」みたいな方向なら許されたのかも。
どうせならそっちに思い切り振り切ってもらいたかったです。