詐欺師の女がたどる悲劇を描いた、ちょっと面白くて気持ち悪い話。やや問題ありのシーンもありますが、普通に見れる映画です。58点
エリカ38のあらすじ
水商売をしながら、アメリカ製のサプリメントをネットワークビジネスで売っていた聡子はある日、喫茶店で上品な女性、信子に話しかけられる。
信子は、その場で15個のサプリメントをまとめ買いし、聡子にある人に会わせたいといった。
別の日、信子が連れて来たのは政府機関で働いているという平澤育男だった。彼は国をまたいで色んなビジネスをしているといい、ぜひ一緒に働きたいと言ってきた。
平澤育男はハンサムで話がうまく、聡子はたちまち彼に夢中になった。そのうち聡子は平澤育男のカンボジア支援事業に関わるようになり、ネットワークビジネスのコネを活かして支援金を募るようになった。
まもなくして大金が流れ込んでくると、聡子は平澤育男と共に豪遊を始める。ホストクラブで遊び、ブランド物を買いあさり、エステに通う毎日だった。
しかしそんな夢のような日が長く続くはずがなかった。パートナーだと信じていた平澤育男が別の女性と浮気をしていたことを知り、支援者から配当金の支払いが遅れていると苦情が入り、聡子は逃げ場を失っていく。
エリカ38のキャスト
- 浅田美代子
- 平 岳大
- 木内みどり
- 小松政夫
- 古谷一行
- 山崎一
エリカ38の感想と評価
樹木希林企画、日比遊一監督による、実際の事件をモチーフにした主犯格の詐欺女を追いかけた人間ドラマ。口の上手い男に乗せられて詐欺の片棒を担ぎ、成功と転落を経験した女の悲しい末路を描いた物語です。
物語は、ネットワークビジネスと水商売で生活している中年の聡子がイケメンの自称国際実業家と出会う>投資詐欺で荒稼ぎする>イケメンと仲間割れする>支援者たちから詐欺を疑われる>タイに逃げる、という流れになっています。
現在の話の中に、ちょこちょこ聡子の少女時代の回想シーンが割り込んできては、亭主関白で愛人のいた父親との嫌な思い出を振り返っていきます。
聡子を知るうえで彼女のバックグラウンドをたどるのは重要なんだけど、正直あの回想シーンにはそれほど意義を見いだせなかったです。
一方でネットワークビジネスをやっていたヒロインが本格的な投資詐欺を手掛けるようになるまでの流れはリアルだし、面白いです。
ヒロインの聡子が売っていたサプリ自体胡散臭いんだけど、さらに上手な胡散臭い男と出会い、グレーからブラックな仕事に着手していく様子がさも現実でもありそうな話です。
講演会で人を集め、抽象的なストーリーで客の心を掴み、集金していく手口は王道ですよね。
なんであんないかにも嘘っぽい話に起業家や富裕層の人たちがひっかかるのか不思議でしょうがないんですよ。
中には親友からの紹介とかで断れなくてっていうパターンもあるんでしょう。あの人が支援してるなら私も、みたいな集団心理が働くこともあるんだろうね。それにしても騙す側が悪いとしても、騙される側も人を見る目がないよなぁ。
主演の浅田美代子がなかなかの好演を見せていて、意外にも若いタイ人との濡れ場まで披露しています。
ヒロインの聡子はいつも笑顔で明るく、人当たりのいい性格で、確かにネットワークビジネスとかやったら女性のネットワークを上手く築いてやっていきそうな雰囲気があります。
一方で詐欺に関与し、それがバレて支援者から怒鳴り込まれても平気な顔しているメンタルの強さがあり、天然っぽく見えて、実は計算高い、図太い女の役に浅田美代子がはまっていましたね。
ほかのキャスティングでは詐欺師の男を演じた平岳大の怪しさも光っていました。詐欺被害者たちの演技も良かったし、安心して見れるレベルです。
邪魔だったのは芸人の山崎静代や小藪の二人ですかね。こういうシリアスでダークな話の中にお笑い芸人が登場すると、笑っちゃって雰囲気ぶち壊すんですよね。二人とも棒読み演技がひどいしね。
ストーリーは発端、監禁、逃亡の三部構成になっていますが、タイのシーンはばっさりカットしても良かったんじゃないかなぁ。あれコントですよね。
浅田美代子が英語喋ってて、英語のセリフがほぼほぼベタなロマンチックな、「I miss you」、「I love you」みたいなのばかりなんですよ。あれで失笑しないほうがおかしいです。
絡みのシーンは映画史上一番見るのがきついベッドシーンといえるかもしれません。まるで自分の母親と友達のスケベの瞬間を見せられているかのような嫌悪感と衝撃を受けました。早い話が気持ち悪いです。
ただし、日本で詐欺を働き、タイに逃亡して、若い男に年齢と名前を偽り、別人を気取っているキモい女を強調する意図があるのだとしたら、あのベッドシーンは成功じゃないかなぁ。万が一のために確認したいんだけど、あれは純愛を見せるつもりで描いたわけじゃないよね?
コメント
一時期、日本のワイドショーでもこの映画のモデルになった事件でもちきりだったけれど、ぶっちゃけ映画化の話を聞いた時には「こんな古今東西何処にでもいそうな水商売系の性悪女をネタにしてどうすんだ?社会批判にも文学的な人間描写にもならんだろ?」と疑問に思った記憶がある。
日本で起こった実在事件の性悪女なら、地方公務員のオッさんをたらし込んで14億円横領させたチリ人のアニータの方が遥かにキャラ立ってて面白いだろうに。
アニータ、映画にしたら面白いでしょうね。