見ていて、悲しく、苦しいシーンが続く家庭内暴力映画。お父さん、お母さんは要注意です。61点
幼い依頼人のあらすじ
弁護士の資格を取り、成功の道へと歩むはずだったジョンヨプは姉夫婦の家に居候していた。彼はプライドが高く、いい仕事以外には就きたくない、といって毎日ごろごろしていた。
あまりのぐうたらぶりにある日、姉が激怒し、仕方なくジョンヨプは児童福祉施設に就職する。しかし彼にとってそれはあくまでもつなぎの仕事だった。
児童福祉施設でジョンヨプは、継母から虐待を受けている幼い姉弟から相談を受けることになった。ダビンは10歳、ミンジュンは7歳だった。
継母が暴力を振るっているのは明らかだったが、警察や学校も決して介入しようとはしなかった。児童福祉施設ができることは彼らの家を訪問して事情を聴くぐらいだった。
姉弟は話しやすいジョンヨプを頼るように頻繁に児童福祉施設を訪れるようになった。そうして彼らはSOSを送っていたが、その時ジョンヨプはさほど深刻にとられていなかった。
ちょうどその頃、ジョンヨプは法律事務所からスカウトされ、高収入の仕事を得ることに成功した。しかしある日、弟のミンジュンが暴力を振られて死亡したことを知り、自分の責任を強く感じる。
ダビンは今もDVの継母と一緒に暮らすことを強いられていた。ジョンヨプはダビンを救い出すために法律事務所の仕事を辞め、ダビンの継母を告訴し、ダビンの弁護を務めることに決める。
幼い依頼人のキャスト
- イ・ドンフィ
- ユソン
- チェ・ミョンビン
- ダビンチェ・ミョンビン
- イ・ジュウォン
- コ・スヒ
- ソ・ジョン
幼い依頼人の感想と評価
チャン・ギュソン監督による、実際に韓国であった幼女殺人事件を基にした、DVドラマです。
父親が暴力的な女性と再婚したことによって日常的にDVの被害に遭っていく幼い姉弟の悲劇を描いた物語で、子持ちの人にとっては、とても見ていられない残酷な内容になっています。
DV事件の加害者に対して甘い韓国社会へ一石を投じる作品であることには間違いないです。社会的に意義があるし、多くの人が見るべきでしょう。
一方で人にすすめたくなるか、というとまた別の話です。子供に対するDVシーンの数々がただただ不快で、胸糞悪くなるので、体力を消耗します。少なくともエンタメとして見る類のものではないです。
つまるところ、見るべきだけど、やめておいたほうがいい、というなかなか複雑な路線を行く映画なのです。
いままでも映画の中で散々DVのシーンは見てきましたが、この映画は不快感でいうと、ちょっと次元が違いますね。
相手が子供だからという理由だけじゃなく、継母の暴力の陰湿さが、半端ないからです。どこか尼崎事件を連想させるものがあって気持ち悪くなりました。
ダビンとミンジュンは母親を知らずに育った子供で、父親は彼らに全くの無関心でした。無関心だけならまだしも邪魔な存在としてか思ってなく、新しい妻が自分の子供に暴力を振るうことも黙認しています。
そんな生活ではダビンとミンジュンには逃げ場がなく、警察に行っても相手にされず、学校の先生に相談してもはぐらかされ、仕方なく頼った先が児童福祉施設のお兄さんだった、というのがストーリーの流れになっています。
最近、世界各国の司法制度のゆがみを取り上げた映画がたくさん出ていますが、韓国は韓国でまた問題を抱えているんですね。
なんでも韓国のDV事件は年々増加の一途をたどり、それに対して加害者の大半は罰金刑か、軽い罪で済んでしまうそうです。
そもそも警察が家庭内に介入しないみたいなスタンスなので、家庭内で事件が起きたら誰も助けてくれないそうです。
法律が時代に追い付いていないのは明らかで、警察がDVを軽視するから最悪殺人にまで発展してしまう、というなんともやるせないのが現状のようです。それって日本の民事不介入と似ていますね。
もちろん一番悪いのは行き過ぎた暴力を振るう親たちなんですが、子供たちを守る気がない社会に対しても、ものすごく腹が立ってきますね。子供たちの泣き叫ぶ声を聞いても隣人たちは決して通報しないし、なんかああいうところも日本と似ていますね。
救いようがないのは、ミンジュンが殺された際、継母はダビンに自白を強要し、ダビンが殺したことにしまう下りです。
継母も継母なら、そんな自白を信じる警察も警察でなんであんなにアホばかりなんですか。あまりにも善意に欠けた人々しか出てこないから滅入るわ。
こんなに見ていて苦痛だったのは、それだけ話にリアリティーや説得力があった、ということなのかもしれません。
特に継母役のユソンの演技はやばかったです。あいつ本物のDV女だろって思わすほど目が行っちゃってました。ほぼほぼ彼女の独り舞台でしたね。
一方で作品全体のクオリティーが高いかというと、そうではありません。映像、演出、ほかの俳優の演技はよくある韓国ドラマと同レベルで、国際的な映画のレベルには達していないです。テンポが悪く、BGMをほとんど使っていないのもマイナス点です。
また、予算もそんなにかかっていないのか、家や建物のシーンがセットっぽくて、どこか安っぽさを感じさせますね。
それでも感情を揺さぶられるのは、ストーリーの残虐性と強いインパクトのせいでしょう。なんせヘビーなので見るならそれなりの覚悟でご覧ください。
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