もうお母さんの話はよくない?って言いたくなるグザヴィエ・ドランによる架空の昔話回想ストーリー。ストーリーテリングの方法を完全に間違いましたね。33点
ジョン・F・ドノヴァンの死と生のあらすじ
2017年、タイムズ誌のジャーナリスト、オードリー・ニューハウスは俳優のルパート・ターナーにインタビューをしようとしていた。
ルパート・ターナーは子供の頃、かつて彼のアイドルだった俳優ジョン・F・ドノヴァンと文通していたことがあった。しかしそのことを彼は周囲に秘密にしてきた。そしてある日、ジョン・F・ドノヴァンは人気絶頂の中、麻薬の過剰摂取で命を落としてしまう。
ルパート・ターナーは、ジョン・F・ドノヴァンと文通していた頃のことを思い出しながら、彼の幼少期の出来事やジョン・F・ドノヴァンがルパート・ターナーに手紙の中で語っていた苦悩についてジャーナリストに打ち明けていく。
すると、ジョン・F・ドノヴァンは同性愛者であることを隠していたことが浮かび上がってくる。また、その流れで少年だったルパート・ターナーとの文通が公になると、それが一大スキャンダルとなり、彼は精神的に追い詰められていったのだった。
ジョン・F・ドノヴァンの死と生のキャスト
- ジェイコブ・トレンブレイ
- ベン・シュネッツァー
- キット・ハリントン
- ナタリー・ポートマン
- スーザン・サランドン
- ジャレッド・キーソー
- キャシー・ベイツ
ジョン・F・ドノヴァンの死と生の感想と評価
「マイ・マザー」、「胸騒ぎの恋人」、「Mommy/マミー」、「トム・アット・ザ・ファーム」、「たかが世界の終わり」、「わたしはロランス」などで知られるカナダ人監督グザヴィエ・ドランによる、二人の俳優の苦悩を回想シーンで描いた人間ドラマ。
グザヴィエ・ドラン監督のお馴染みのテーマである母親と息子の関係と同性愛のエピソードを織り交ぜつつ、彼自身が8歳のときにレオナルド・ディカプリオに書いたファンレターを基に作ったそうです。
こちらが実際のファンレター。
Xavier Dolan introduced THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN at #TIFF18 by reading a letter he wrote at the age of 9 to Leonardo DiCaprio.
Eat your heart out, internet: pic.twitter.com/SoLmyK8wge
— TIFF (@TIFF_NET) September 11, 2018
物語は、人気俳優と、人気俳優に憧れる子役俳優の二つのストーリーを平行して見せていきます。
二人には孤独で、信用できる人間が周囲におらず、母親との関係が微妙だ、といった様々な共通点があります。
そして似た者同士が年の差がありながらも手紙でやり取りしていくうちに、少年は誰からも有名人と文通していることを信じてもらえず、学校でいじめられ、益々自分の殻の中に入っていくのに対し、人気俳優はショービジネスの世界でどんどん病んでいく、というのがあらすじです。
最大の問題点は、そのストーリーを全て回想シーンで伝えている点ですね。それも少年ルパート・ターナーがジャーナリストにジョン・F・ドノヴァンの話を語り聞かせる手法を取っているので、視聴者と登場人物にものすごい距離ができてしまってるんですよ。
だってフィクションの世界の中の登場人物が、別の登場人物の過去について淡々と話してるだけなんですよ。誰かが昔に見た夢の話をダラダラ聞かされるみたいな感覚ですかね。
そもそもお前誰だよっていう昔話の中で、ほかの誰だよって人たちがたくさん出てくるんですよ。それも本人が語ってるんじゃなくて、第三者がそれを語ってるんだから頭に入ってくるわけないよね。もちろん無駄な会話が多いのもその原因の一つだけど。
つまり語り手の視点と時間軸の選択ミスがこの映画を台無しにしてるなぁ、というのが正直なところです。
せめて一人称で進むような物語にしたら、まだ見れたと思うんですよ。なんで子供との手紙のやり取りだけでジョン・F・ドノヴァンの背景があそこまで浮かび上がってくるんだよって話だし、ハリウッドスターが少年のファンと何年も文通するほど暇じゃねえだろって思いましたね。実際、レオナルド・ディカプリオも少年だったグザヴィエ・ドランには返信してないみたいだしね。
それで肝心のオチが、ゲイであることを隠していたジョン・F・ドノヴァンに憧れていた少年ルパート・ターナーも青年になり、やっぱりゲイに目覚めたというお粗末なものになっていました。みんながみんな同性愛者にしなくてもよくない?
この映画がほかのグザヴィエ・ドラン監督の作品と違うのは、フランス語ではなく、全編英語にして、ハリウッドの有名俳優たちを中心にキャスティングしているところでしょうか。
いわば視聴者層を広げる狙いがあるんでしょうが、皮肉にもターゲットを拡大したせいで、逆に売り上げが落ちるという結果に至っていますね。早い話がアンダーグランドっぽさが売りだった監督が、大衆向けの映画を撮ったら失敗したってことですよ。
興行収入はわずか300万ドルほどにしかならなかったそうです。おそらく赤字なんじゃないかな?
コメント
僕は面白いと思いました。そこまで登場人物の会話が無駄な話には思えませんでしたし、少し余裕をもって2人の過去やバックグラウンドを描いてあげた方が感情移入しやすいのではないですかね?
あとご存知かも知れませんが、この作品はリバーフェニックスへのリスペクトを込めているそうなので、ラストのカットがプライベートアイダホに似せていたり、ルパートがゲイである設定があるのだと思います。