退屈で最後まで見るのが結構苦しい奴隷映画。事実は悲惨で地獄なのに、なぜか怖いとも可哀想とも感じられないダメ演出になっています。33点(100点満点)
ハリエットのあらすじ
1840年、奴隷が制度が存在していたメリーランド州。奴隷のアラミンタ・ミンティ・ロスは、自由の身となっていた黒人男性ジョン・タブマンと結婚する。
ミンティは母や妹と一緒にブロデス一家の奴隷として仕えていた。ブロデス一家の曾祖父は、ミンティの母ハリエットが45歳になったら自由の身にしてやると約束していたが、孫のミスターブロデスは彼女たちは一生自分の奴隷だといって約束を反故にする。
まもなくしてミスターブロデスは亡くなったが、息子のギデオン・ブロデスがミンティを売り飛ばそうとしているのを知って、彼女は夫を残してたった一人で逃亡を図る。
ミンティは川で溺れかけながらも、なんとかフィラデルフィアにたどり着いた。フィラデルフィアでは自由の身の黒人や奴隷解放運動の支持者が大勢いた。
そこで奴隷廃止論者のウィリアム・スティルと出会ったミンティは、母親の名前と夫の苗字を取ってハリエット・タブマンと名乗ることにする。
ハリエットはフィラデルフィアで自由を満喫したが、やがて残してきた自分の家族たちを救うために命がけでメリーランド州に戻ることを決意する。
ハリエットのキャスト
- シンシア・エリヴォ
- レスリー・オドム・Jr
- ジョー・アルウィン
- ジャネール・モネイ
- ジェニファー・ネトルズ
- ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ
ハリエットの感想と評価
ケイシー・レモンズ監督による、実在した黒人女性の人生を描いた奴隷の歴史ドラマ。
社会的にも歴史的にも意義があり、多くの人々の命を救った偉人の物語ではあるものの、いかんせん質が低く、退屈な映画です。
まず、最初に気になったのが映像のクオリティーの低さですね。舞台が1800年代から1900年初期の話だけに、古い感じの映像にしてあるんですが、演出による古さではなく、本当に古い映画なのかなって思わせるほどの荒さがあります。
それは古さというより、安っぽさとも言えるもので、映像そのものから来るのではなく、俳優たちが着ている服だったり、セットだったり、俳優自身だったり、全てがB級感で満ち溢れているのです。
ストーリーには派手さがなく、見所が少なく、また奴隷の話にしては悲惨さが映像として伝わってきません。つまるところ「それでも夜は明ける」のようなドラマチックさが備わっておらず、話にいまいち入り込めませんでした。
終始、この映画がフォーカスしているのはヒロイン、ハリエットの勇姿で、その勇敢さはもちろん、神がかった幸運の持ち主であることばかりが強調されているのが余計に安っぽさに拍車をかけていました。
実話ベースの話なのに神様のお告げを聞いて、逃げる方向を決めるといったスピリチュアルな話に成り下がっていたのもつまらなくさせた理由のひとつでしょう。
神様の声を聞いて川を歩いて渡ったら「見事向こう岸に渡り切れた!奇跡だわ!」みたいな描写とか、「いやいや、ただ浅かっただけでしょ」って言いたくなったし、追っ手がすぐそこまで来てるのに突然瞑想とかしちゃう出す下りはいかにもフィクションっぽくてついていけませんでした。
黒人女性がたった一人で奴隷たちを解放しようと暗闇の中、家々に忍び込んで白人の主人たちに気づかれないように逃亡を図るって聞いただけでも、ハラハラドキドキするのに、なぜか緊張感が全然ないんですよね。
これはもっとアクションやスリラーの要素を加えるべきでしたね。エンタメ度が薄すぎる。どうせならタランティーノ映画並に銃を撃ちまくって、流血させまくったらよかったのに。
単純に監督の演出が下手だというのもあるけど、いわゆる悪役を務めた俳優たちにもそれぞれ迫力を感じられませんでしたね。せめてもっと悪そうな、いじわるそうな奴らだったら恐怖を感じられたかも。
特に最後までハリエットの命を追う、ギデオン・ブロデスのキャラの弱さといったらないです。ハリエットもちゃんととどめ指さないと。なにを綺麗な話にしちゃってんだよ。
もしこの映画が話題になるとしたら、それはシンシア・エリヴォがアカデミー賞にノミネートされているからという理由以外にないでしょう。
そのシンシア・エリヴォの演技ですら、それほど注意を引くものではなかったです。「それでも夜は明ける」のルピタ・ニョンゴと比べたら、明らかに存在感がないし、演技は普通だし、おそらく受賞することはないんじゃないかと思います。
毎年のようにアカデミー賞では奴隷や差別をテーマにした作品がなにかしらノミネートされますが、アカデミー賞があえて差別主義ではないことをアピールする材料に使っているような印象がなくもないです。だからいつも実際は受賞するのは白人映画、白人俳優ばかりでしょ。
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