推理小説ファンならきっと楽しめる、殺人事件と遺産相続をめぐる犯人捜しドラマ。いい意味でサプライズがありました。63点(100点満点)
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のあらすじ
85歳の誕生日パーティーの翌日、推理小説家のハーラン・スロンビーが自宅の部屋で喉を切られた状態で死亡していた。翌日遺体を発見したのはメイドのフランだった。
一見、自殺のようにも見えるが、警察は事件として取り細の上げ、捜査を開始する。捜査のためには敏腕私立探偵のブノワ・ブランが何者かによって匿名で雇われていた。
捜査を進めていくと、ハーラン・スロンビーの子供家族たちが事件前にそれぞれトラブルを抱えていたことが判明する。
義理の息子のリチャードは娘以外の女性と浮気をしていたことをハーランが突き止めていた。義理の娘のジョニーは、ハーランが孫の学費の仕送りを二重に受け取っていたことが分かった。
末っ子のウォルトは家族経営の出版社を首にハーランから首にされていたところだったのに対し、孫のランサムは遺産相続から名前を省かれていた。
一方でハーランの看護をしていたマルタ・カブレラは正直者で優しい心の持ち主として知られていた。彼女は嘘をつくと吐き気を催すほどだった。私立探偵のブノワ・ブランはそんなマルタ・カブレラに事件の裏側であったことを聞くことにする。
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密のキャスト
- ダニエル・クレイグ
- クリス・エヴァンス
- アナ・デ・アルマス
- ジェイミー・リー・カーティス
- マイケル・シャノン
- ドン・ジョンソン
ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密の感想と評価
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のライアン・ジョンソン監督によるコメディーサスペンスドラマ。
莫大な財産を持つおじいちゃんが変死したのをきっかけにその遺産を狙う子供たちが容疑者として挙げられていく犯人捜しの物語で、いわゆる「犯人はこの中にいる」的な推理劇です。雰囲気はまるで漫画「金田一少年の事件簿」のようですね。
殺人事件ではあるものの、怖さやハラハラドキドキとは無関係なのに対し、テンポが良く、ストーリーテリングが滑らかです。それにユーモアがたっぷりで、俳優たちのパフォーマンスも悪くなかったです。
キャストは何気に演技派俳優たちが集まっていますね。ハロウィンシリーズのジェイミー・リー・カーティス、「ノクターナル・アニマルズ」のマイケル・シャノン、「ヘレディタリー/継承」のトニ・コレットなど、みんな安定の演技をしていました。
特にダニエル・クレイグとクリス・エヴァンスの二人がこれまでとは違うキャラを演じていて新鮮です。
ダニエル・クレイグはすっかり007のイメージに染まっていたところだし、クリス・エヴァンスなんてキャプテンアメリカのイメージしかなかったですからね。そんな二人のイメージ脱却を十分に果たしていたんじゃないでしょうか。
犯人についてはラストにちゃんとサプライズを用意してあり、真犯人登場的な演出もありますが、見どころはそこじゃない気がしますね。
むしろ体質的に嘘をつけない女の子マルタのキャラクターこそが最大の魅力だったのではないでしょうか。嘘をつくと、吐き気を催すっていうのが笑えました。そんな奴いるんのかよって話だけど、このストーリーの中ではうまく機能しています。
看護師のマルタが、実は被害者のハーランから一番信用されていたというのも皮肉が効いているし、マルタ役の女優アナ・デ・アルマスの演技はもちろん、マルタの存在そのものがストーリーの核となっていましたね。
また、この映画にしろ、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」にしろ、ライアン・ジョンソンはコメディ向きの監督なんだな、というのが分かりました。間違ってもSF映画向きの監督じゃないですね。
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」を見た限りではそもそも監督としての資質に疑問がありましたが、これを見ると案外ちゃんとした映画が撮れるんだなぁとも思いました。
脚本もライアン・ジョンソン本人が書いていて、かなりしっかりできてます。基本的に会話を中心に物語が進んでいくので、脚本の完成度抜きにこの映画は成立しなかったはずです。
変にミステリースリラーとかにしなかったのもこの映画を面白くした要因だったのかもしれません。ほどよくコメディー要素が効いているのも効果的で、全く新しいタイプの映画っていうわけじゃないんだけど、とにかく見やすいです。不思議と集中力も途切れなかったし、最後まで飽きなかったです。
多くの人にとってこの映画の出来はサプライズだったんじゃないかなぁ。少なくとも僕は、ライアン・ジョンソンを見直しちゃいました。
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