2017年に獄中死したカルト教団の教祖チャールズ・マンソンとその女たちの洗脳具合を描いた衝撃のストーリー。色んな意味で気持ち悪い話です。58点(100点満点)
チャーリー・セズ / マンソンの女たちのあらすじ
レズリー、パトリシア、スーザンの三人は殺人事件を起こした末、終身刑を受け、刑務所にいた。その間、彼女たちに勉強を教えようと、大学を卒業したばかりのカーリーンが三人のもとを訪れる。
カーリーンは、本や教科書を通じて現実社会のことを伝えようと試みるが、チャールズ・マンソンにすっかり洗脳された三人は、「でもチャールズはこう言っていたから」と言って聞き耳を持とうとしなかった。
事件を起こす前、レズリー、パトリシア、スーザンはチャールズ・マンソンを教祖とするカルトグループとカリフォルニア州にあるコミューンで共同生活をしていた。
そこでは所有物を持たず、俗物にとらわれず、時間や物質にまどわされることなく自由に生きる、というのがポリシーだった。
チャールズ・マンソンは、女性たちにエゴを解放するように言った。コミューンではギターを弾き、歌を歌い、LSDを使いながらそれぞれが性愛に楽しんでいた。
一見、そこは理想郷のようで、家族や社会にうんざりしていた若者たちが噂を聞きつけ、チャールズ・マンソンの元を訪れては、またコミューンに加わるのだった。
ところがあるときからチャールズ・マンソンは、過激な思想を持つようになり、世界の終わりが近いとコミューンのメンバーに告げる。やがて平和なコミューンの住人たちはチャールズ・マンソンに洗脳され、殺人鬼へと化していくだった。
チャーリー・セズ / マンソンの女たちのキャスト
- ハンナ・マリー
- ソシー・ベーコン
- マリアンヌ・レンドン
- グレイス・ヴァン・ディーン
- マット・スミス
チャーリー・セズ / マンソンの女たちの感想と評価
「アメリカン・サイコ」で知られるメアリー・ハロン監督による、カルト集団の教祖とその女たちを描いた洗脳ドラマ。
世俗的な生活を捨てることを望む女性たちがチャールズ・マンソンと出会い、愛と平和と自由溢れる人生観に心を癒されたかと思いきや、やがて強い洗脳から犯罪行為に走る物語です。
「赤い航路」、「おとなのけんか」などで知られる映画監督ローマン・ポランスキーの妊娠中の妻を殺したのも彼らで、物語にはそのシーンも登場します。
ストーリーは、刑務所の中の出来事(現在)と、コミューンでの生活(過去)を交互に見せる構成になっていて、事件前と事件後のマンソンの女たちの心境の変化をつづっていきます。
若干、キャストはB級寄りで演技はいまひとつでした。僕が知りたかったのはコミューンでの生活の様子だったので、刑務所内のエピソードもいらないんじゃないかって思ってしまいましたね。いずれにしろ、この事件に興味がある人なら見ても損はないでしょう。
場所や考えに違いはあっても、その経緯や結末は日本のオウム真理教とさほど変わらず、カルト集団はいつも一人のカリスマ的リーダーを妄信した人々が、自分で考えることを止め、リーダーに言わるがままに生き、やがて暴走する、という点で一致しているのが不思議ですね。
自分たちのコミュニティーの中で社会的倫理に惑わされることなく、自由きままに生活し、毎晩パーティーに明け暮れる、それだけなら一見するととても幸せな人たちという感じがするんだけど、どうして最後は必ず暴力に走るんだろう。ずっと踊ってればいいのに。
エゴを捨てろ、などと女性たちに口を酸っぱくして言うチャールズ・マンソン本人が、レコード会社のプロデューサーに認めてもらおうと必死で曲を練習してロックスターになることを夢見る下りとかは滑稽で笑えました。
やはりどこかで認められたい、有名になりたい、成功したい、といった承認欲求があったんでしょうね。それこそお前のエゴだろって思ったけど、チャールズ・マンソンを信じ切っている人々はもちろん矛盾点を指摘しないし、指摘できない雰囲気があって、彼を尊敬のまなざしで見つめていたのが印象的でした。
麻原彰晃もそうだけど、チャールズ・マンソンもまた人の心を掌握するのに長け、強いカリスマ性があるという点で共通していて、ある意味すごいですけどね。
だって普通に考えて、あんな汚い奴らが言葉巧みに若い女の子を誘っても、誰もついてこないでしょ。それなのになんでも言うこと聞かせちゃうんだから。
チャールズ・マンソンなんて身長が160cmぐらいしかない小柄な男で、見た目は気持ち悪いし、清潔感はないし、よく女たちが心を許したなぁ、と逆に感心してしまいます。よっぽど魔性の魅力があったんでしょう。
この映画ではかなりチャールズ・マンソンをイケメン風に描いていたのはちょっとダメですね。あれはもっと外見的に汚くて格好悪い男にしないと。
それに対し、女たちは実際本当に若くて可愛い子たちがいたみたいですね。信じられないね。
さて、そんなチャールズ・マンソンはあるときを境に急におかしなことを言い始め、暴力的になり、金持ちの家に侵入して金品を盗もうなどと言い始めます。
そして強盗に自分の女たちを加担させ、挙句の果てには自分では手を汚さず、手下に殺人をさせる、という暴挙に出るのでした。
早い話が完全に狂っちゃったわけだけど、正気から狂気へと移っていく動機やきっかけはこの映画を見ている限りでは伝わってこなかったです。
強盗するようになったのは、もしかすると生活が苦しかったのかなぁとも思えたけど、どうなんだろう。
そして彼に洗脳された男女は果たして加害者なのか、被害者なのか、というのは難しい問題ですね。
殺人を犯したという意味では完全に加害者なんだけど、弱みを握られ、心を操られ、恐怖で支配され、まともに考えることができなくなった、という意味では被害者といえるんでしょうか。いすれにしてもいかに人間が弱い生き物であるかが分かりますね。
タイトルのチャーリー・セズ(Charlie Says)は「チャールズ・マンソンはこう言ってる」という意味で、何を聞いても自分の意見は言わず、チャールズがどう考えているのかを話す女たちを指しています。
洗脳された彼女たちにとってはチャーリーが言うことが全てで、自分の考えはあってないようなものなのです。
洗脳されたマンソンの女たちを見るのは、怖いし、気持ち悪いし、哀れだし、最後まですっきりしませんでした。後味の悪い映画です。
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