少女が詩人の男と緩い恋愛関係を経て、不幸と絶望を味わっていく、ややネガティブな物語。バイオグラフィーとして普通に見れますが、特に見どころはないです。50点(100点満点)
メアリーの総てのあらすじ
1814年のロンドン。作家を志すメアリー・ゴドウィンは、著名な作家である父親の本屋の店番をしながら、どこか物足りない生活を送っていた。
継母はメアリーに冷たく、何かと彼女と衝突した。実の父親も厳格だったため、メアリーが家族の中で心を許しているのは異母姉妹のクレアぐらいだった。
自分の家に居場所がなかったメアリーはある日、スコットランドにある父の友人の家で暮らすようになる。そこで紹介されたのが21歳の若き有名詩人のパーシーだった。
すぐに惹かれ合った二人だったが、パーシーには妻子がいた。メアリーは動揺したものの、パーシーは自由恋愛主義者だと言った。人々は自分の気持ちに素直になって、好きな相手を愛するべきだと言った。
ところがパーシーとメアリーは双方の親から強い反対を受け、仕方なく駆け落ちすることにする。もちろん二人の幸せは長く続かなかった。
メアリーの総てのキャスト
- エル・ファニング
- ダグラス・ブース
- トム・スターリッジ
- ベル・パウリー
- スティーヴン・ディレイン
- ベン・ハーディ
- メイジー・ウィリアムズ
メアリーの総ての感想と評価
「少女は自転車にのって」のサウジアラビア人監督ハイファ・アル=マンスールによる、小説「フランケンシュタイン」の作者メアリー・シェリーが名作を創り出すまでの過程をつづった人間ドラマ。
自由恋愛主義者のイケメンアーティストに恋した少女が、彼に散々振り回されたことで苦しみ、惨めになっていく中で、絶望溢れる怪物フランケンシュタインを創造する様子を描いていきます。
ストーリーはざっくり説明すると、メアリーが継母からいじめに遭う>実家を出て、父の友人宅に引っ越す>詩人と恋に落ちる>詩人に奥さんと子供がいることを知る>親から二人の関係を反対される>駆け落ちする>再び詩人が自由恋愛を始める>メアリーが絶望する>フランケンシュタインのアイデアが浮かぶ、といった感じになっています。
基本的には女性目線の悲劇風ドラマで、見ようによっては悪い男に騙された哀れで純粋な女を描いた、フェミニスト映画のようにも映ります。
男も女も自分のチョイスで生き方を決めているのに、どこか男がクズで女は被害者という設定になっているのが気になりますね。
登場人物の男たちは、お金持ちで、ワインばかり飲んで、ろくに仕事もせず、親の財産を切り崩して生活しているような輩ばかりで、自由恋愛の名のもとにやりたい放題します。
一方でメアリーは、妻子持ちの男を愛し、自分のためにパーシーがいとも簡単に家族を捨てたのを目撃しつつ、今度は自分の異母姉妹クレアに彼を取られるのを黙って見過ごしていくしかない状況に陥ります。
結局のところ男も女も散々自堕落で、好き勝手なことをしたうえで、お互いの優先順位がその時々で変わっていってるだけでした。みんなリベラルを装っている割にはいざ自分のパートナーが自由なことをしようとすると、嫌がるのが笑えます。
その間、メアリーは、破産して夜逃げをしたり、赤ん坊を亡くしたりといった絶望を経て、フランケンシュタインの物語を完成させる流れになっていますが、正直あのメインストーリーが小説フランケンシュタインにどう結び付いていったのかはあまり伝わってきませんでした。一つ一つのエピソードが薄いのかなぁ。
子供を亡くしたのは本当に災難だけど、それ以外は絶望、絶望いうほどのことじゃないからね。旦那が愛してくれなくなった、浮気した、生活に困ったって嘆くならほかの生き方探そうよ。それなのに「私にはもうどうすることもできない」みたいな顔されてもね。親のスネをかじる男にただついて行って、上手く行かなかっただけじゃないですか。
小説フランケンシュタインのストーリーは、ご存知の通り、科学者を志すフランケンシュタインが、理想の人間を創り出すために墓を掘り起こして、死体をつなぎ合わせて怪物を作る話です。
怪物はあまりにも醜かったため結局フランケンシュタインに捨てられ、人間から迫害を受け、復讐しますが、この怪物のストーリーが、この映画でつづられているメアリーの体験とリンクするかというと、ちょっと弱いかなぁ。メアリーの内面が僕には見えてこなかったですね。
だから「フランケンシュタイン誕生の真実」というキャッチコピーはやや大げさかな。ディオダディ荘の怪奇談義が物語誕生のきっかけだったとしても、実際どんな体験やトラウマが基になっているかは分かりようがないしね。
あと、絵的にもセット丸出しの野外シーンか代わり映えのしない室内シーンが続くうえ、色恋沙汰のシーンも全てオブラードに包んで描いているので、見どころが少ないです。
もうちょっと色気を出してもよかったんじゃないかなぁ。そこはやはりサウジアラビア人女性が監督したのもあって、あれぐらいが限界だったんでしょうか。
普通に見れる映画ではあるけど、エル・ファニングの困惑してる表情を2時間見ているのが果たして楽しいのか、俺の人生そんなのでいいのか、とふと悲観してしまう自分がいたのも事実です。
ラストは出版業界の女性および年齢差別から、匿名で出版せざるを得なかった事情を描いていました。当時メアリー・シェリーは若干18歳。彼女の才能を疑ってかかった業界人たちは、どこか「天才作家の妻40年目の真実」の世界と通じるものがありますね。
ただ、ユニークで抜きんでた作品は匿名だろうが、なんだろうがちゃんと世間に知られるようになるんですね。
死後、名声を獲得する作家も少なくない中で、メアリーは後に自分名義で出版し直したりと、恵まれていたほうじゃないでしょうか。
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