演技はいいけど、演出が偏りすぎている、おっさんの再起ドラマ。決して格好いいとか、感動するとかっていう映画ではないです。もうちょっと主人公がいい奴だったら共感できたんだろうけど、ただの嫌な奴でした。55点(100点満点)
ガチ星のあらすじ
元プロ野球選手の濱島浩司は引退後、実家で母親と暮らし、パチンコに入り浸れるなど、自堕落な生活を送っていた。
選手時代に結婚していた妻とは別れ、一人息子とも離れ離れになった。とりあえず親友の居酒屋でバイトをしたものの、親友の妻に手を出し、後に親友にそのことがバレてしまう。
なにをやってもダメな濱島浩司は行きつけのラーメン屋で競輪選手になればいいと勧められ、競輪学校に入学する。
そこでも40歳を目前にした彼はハードな練習について行けず、再び挫折が待っていた。しかし濱島浩司は、無我夢中で練習に取り組む同郷の久松孝明の姿を見て、自分を奮い立たせるのだった。
ガチ星のキャスト
- 安部賢一
- 福山翔大
- モロ師岡
- 博多華丸
- 福山翔大
- 西原誠吾
- 林田麻里
ガチ星の感想と評価
江口カン監督による、同名ドラマの映画化。競輪をテーマにした元プロ野球選手の再起をかけた人間ドラマです。
キャストの演技はいいし、ストーリーは分かりやすいし、1時間半ほどでまとめてあって、見やすい映画でした。
それに対し、不幸&ゲスエピソードを詰め込みすぎて、陰と陽のバランスが悪かったですね。僕はどちらかというと、不幸&ゲスエピソードは大好物なんですが、あまりにも偏りすぎると、美味しくなくなるんですよ。甘い物が好きだからと言って砂糖を口に放り込まれても困るでしょ。
物語は、ラストまでほぼほぼ嫌な話で埋め尽くされています。主人公の濱島浩司は、現役プロ野球選手の時代から試合中にタバコを吸うほど、覇気が見られない中継ぎ投手で、あっさり首になって家に帰ると嫁と大喧嘩し、そのままの足でキャバクラに行って豪遊し、チンピラと喧嘩して警察のお世話になる、という負の連鎖が続きます。
結局、嫁とは離婚して、実家暮らしになり、酒やパチンコに入り浸れ、親友の奥さんと不倫し、息子との約束もすっぱかしてしまうほど、落ちていきます。
全ては濱島浩司が自暴自棄になっていた様子を表現しているんだろうけど、それならいっそのこと犯罪に走るぐらいまで行っちゃったほうがよかったような気がしますね。
最近、よくあるじゃないですか。元野球選手とかサッカー選手がやらかして捕まる事件。大げさに描くならあそこまで極端にしないとね。
さて、そんなダメ男の濱島浩司は、人に勧められるがままに競輪学校に入ります。そこからの彼の行動も不可解で、いざ学校に入ったんなら覚悟を決めればいいのに、まだ酒もたばこも辞めないし、なかなか本気を出そうとしないんですよね。
それで成績は生徒の中でもダントツでビリなのに、なぜか学校で一番偉そうにしていて、「努力が一番大事だ。努力だけが結果に結びつく」とか、一丁前のことを言うのが意味不明でした。お前が言うなって。
正直、あんなに生半可に練習して、プロになれるほど競輪の世界甘くないでしょ。ちょっと舐めてるよね。
中年男が再起を果たす姿がテーマなんだったら、もっと早い段階で人が変わったようにストイックに練習に取り組めばいいのに結局ちょいちょいっと練習してとんとん拍子にプロになって、プロになってもまだ適当にやってる印象を受けたせいで、主人公を応援しようとは思えなかったです。
頑張り出したのが、相手選手に大ケガさせてからってタイミング遅くない? 「わかった、わかったぞ!」とか道端で大声で発狂してたけど、何もわかってねえよ。
狙いとしては、主人公をダメだけど、憎めないキャラにしたかったんでしょうね。でも普通に憎めるよね、あんなにクズだったら。
だって家族も友達も大事にしない。仕事も適当にやる。酒、たばこ、パチンコに依存してる。偉そうで態度がでかいって、もはやいいところなにひとつないじゃん。あれでせめて腰が低ければ救いようがあるんだけどね。
実力の主義のスポーツの世界で生きてきたくせに、自分より成績がいい、他の選手たちにあんな態度を取れる思考回路が分からないです。新人のくせにベテラン面って。
ストーリーは共感にかけた一方で、レースのシーンは臨場感があったし、練習の風景も好きです。
また、俳優たちの演技は全体的になかなか良かったと思います。主人公を演じた安部賢一もダメ男の雰囲気が出てたし、ヒステリックな奥さん役の林田麻里もリアルでした。
中でも一番、印象に残ったのは、競輪学校の講師を演じた西原誠吾ですね。鋭い目つきといい、しごき方といい、こういう嫌味な講師いそうだなあ、という役作りができていて、ほかの映画でもぜひ見たい俳優ですね。
ただ、せっかく九州を舞台にして、キャストも地元から厳選したんだったら、いっそのことレジェンド中野浩一も講師役でカメオ出演させたら、よかったんですけどね。もちろんユニフォームにはアートネイチャーのロゴをつけて。
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