追憶の森はエセ日本映画！感想とネタバレ

日本の自殺スポットをネタにした、見れないことはないけど、深みはなく、こわだりも感じられない薄い人間ドラマ。パワーストーンを買うのが趣味だという人ならなんとか楽しめるかもしれません。39点（100点満点）

追憶の森のあらすじ

最愛の妻ジョーンを亡くしたアーサーは絶望の末、理想の死に場所を求めて自殺の名所である日本の富士の樹海にやってくる。

睡眠薬を服用して死のうとしたアーサーはしかし森の中で彷徨っていたサラリーマン風の日本人の男ナカムラを見つけ、彼を助けることに。

二人は森の奥へと入っていたせいで遭難してしまったうえ、アーサーは崖から落下して大けがを負ってしまう。

必死で生き延びようとする二人は、なぜ樹海にたどり着いたのかを語り合い、アーサーは妻との思い出を振り返る。

追憶の森のキャスト

• マシュー・マコノヒー
• 渡辺謙
• ナオミ・ワッツ
• ケイティ・アセルトン
• ジョーダン・ガヴァリス
• ジェームズ・サイトウ
• オーウェン・バーク
• 玄理

追憶の森の感想と評価

「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」、「プロミスト・ランド」、「ドント・ウォーリー」などで知られるガス・ヴァン・サント監督によるスピリチュアル系夫婦ドラマ。

富士の樹海を舞台に自殺願望のあるアメリカ人の男が生死のはざまを彷徨った末に心の平穏を手に入れていく人生再出発物語です。

俳優陣にマシュー・マコノヒー、ナオミ・ワッツ、渡辺謙などを揃え、そこそこのパフォーマンスは見せているの対し、中盤の退屈さが作品全体にかなりのダメージを与えている、もったいない映画です。

夫婦の一連のエピソードはなかなかリアルだし、ナオミ・ワッツが好演しているので、見ていられます。

一方で樹海のエピソードはできればフルカットでお願いしたいぐらい、不必要で退屈な話になっていましたね。もちろんメインの樹海をカットしたらもともこもないんだけど。

そもそもこの映画、青木ヶ原の樹海で撮影したんじゃなくて、ほぼほぼ森のシーンはアメリカらしいですね。

映画がすごいのは、「ここは富士の樹海ですよ」と物語の中で言ってしまえば、不思議とそう見えてくるところで、簡単に視聴者を騙せちゃうからね。

ただ、そういうところに監督のこだわりが出るのもまた事実で、そのせいか日本らしさとか、日本の雰囲気はほとんど感じられず、もしかしたら渡辺謙の役ですら中国人俳優とかにオーディションさせていた可能性もありますね。むしろチョウ・ユンファとかでよかったんじゃないの？

物語は、妻を亡くした夫が自殺するために富士の樹海を目指したかと思いきや、いざ森に入っていったら、今度はそこから出ようと必死で頑張る、という本末転倒な話になっていました。

それって結婚を夢見て婚活に命をかけてきた奴が、いざ結婚したら上手くいかず、今度は離婚を成立させるために全力を尽くすみたいなストーリーですよね。

後者の場合は、まだドンマイで済むけど、前者の場合は外国にまで行って、現地のレスキュー隊を出動させたりしてるから笑えないです。

実際、海外に行って自殺する人って少なくないんですかね。海外にも色々な自殺スポットがあるみたいだけど、いい迷惑だと思いますよ、現地の人たちからしたら。

本来なら大自然に囲まれた美しい観光地場所が、一部の人間のせいで幽霊スポットみたいな扱いにされて、人が近づかなくなるっていうのはなんなんでしょうね。

主人公のアーサーが森でたまたま見かけた日本人サラリーマンが英語ペラペラというのも都合がいいし、またその辻褄を合わせるかのようにラストにスペシャルスピリチュアル系なんじゃそりゃエンディングが待っています。あの終わり方に僕は神秘を感じませんでした。

唯一の救いだったのはやはりナオミ・ワッツ扮するジョーンの登場シーンでしたね。特に夫婦中が悪い時のエピソードがいいですね。

些細なことで喧嘩が始まる感じとか上手いし、自分より稼いでいない夫を妻がバカにする下りとか、さもありがちでした。

できればずっとあの二人には夫婦喧嘩しててもらいたかったのに妻のジョーンが重病にかかって仲直りしちゃうのが残念でした。

妻を病気で失うと思うと、それまでの問題なんてどうでもよくなるというのは分かります。でも病気をきっかけに仲直りして夫婦愛を取り戻していった末に妻が交通事故で死ぬってなくない？　病気のフリはなんだったんだよってなりましたね。

そう考えると、富士の樹海しかり、交通事故しかり、何かと必然性のない設定が目立ちますね。これ、ゴールデンブリッジから飛び降りる話じゃダメだったんですかね？　もちろんそれだと話が一瞬で終わっちゃうけど。