見ていて気持ちいいけど、エンディング以外はすぐに忘れてしまうサスペンス劇。名作かどうかは自分の目で確かめてください。67点(100点満点)
ユージュアル・サスペクツのあらすじ
ディーン・キートンは、サンペドロ港に停泊している船のデッキで傷を負っていた。そこにカイザーと呼ばれる黒服の男が現れ、彼の頭を撃ち抜き、船を爆破させた。
翌日、警察は船で27人の遺体と2人の生存者を発見する。生存者のうちの一人はハンガリー人で全身大やけどを負っていた。もう一人は手足の不自由な詐欺師ロジャー・バーバル・キントだった。
デヴィット・クイヤン捜査官はニューヨークからわざわざロジャー・バーバル・キントを尋問するために駆け付けてくる。
すでに重罪の容疑は晴れ、保釈の身となろうとしていたロジャー・バーバル・キントの口からデヴィット・クイヤン捜査官は事件の真相を聞き出そうとする。
一方、もう一人の生存者のハンガリー人は恐怖におののきながらも何度もカイザー・ソゼの名前を叫んだ。
一体カイザー・ソゼとは何者なのか。ロジャー・バーバル・キントに話を聞くと、彼は6週間前に警察で自分を含む5人の犯罪者が面通しで集められたことから語り始めるのだった。
ユージュアル・サスペクツのキャスト
- ガブリエル・バーン
- ケヴィン・スペイシー
- スティーヴン・ボールドウィン
- ケヴィン・ポラック
- ベニチオ・デル・トロ
- チャズ・パルミンテリ
ユージュアル・サスペクツの感想と評価
「X-MEN: アポカリプス」、「ボヘミアン・ラプソディ」などで知られるブライアン・シンガー監督による、オチ重視のサスペンスドラマ。
騙された人が続出した犯人捜し映画で、ラストのどんでん返しはいまだに語り継がれています。
8割ぐらいは”回想”シーンによって構成されていて、ケヴィン・スペイシー扮するロジャー・バーバル・キントの証言の再現VTRをたどっていくような作りになっています。
警察が捜査しているのは密輸船で起こった爆発事件。これの黒幕だとされるカイザー・ソゼとは一体誰のことなのか、というのを数少ない生存者であるロジャー・バーバル・キントから聞き出そうとする様子を描いていきます。
回想シーンと尋問シーンを入れ替わりに映し、ラスボスにいいように操られる5人の犯罪者の行方を追うストーリーテリングはスムーズで面白いです。
カイザー・ソゼというネーミングがまず成功しているし、物語の中で彼を伝説化し、決して姿を見せない、自分の家族すらも殺してしまう、極悪非道な男というキャラに仕立て上げていく演出は上手いですね。
そうすることで視聴者にある種の犯人像を植え付け、偏見を持たせておいて最後にまんまと騙す、という仕掛けは功を奏していたと思います。
何気にすごいのが、製作費はわずか600万ドル程度の低予算映画なんですよね。多くの俳優たちは当時無名だったというのと、通常より安いギャラで参加したからだそうです。
ちなみにこの映画の成功をきっかけにケビン・スペイシーはトップ俳優へとなり、ベニチオ・デル・トロも演技派として認められ、またブライアン・シンガー監督はX-メンシリーズで大儲けすることになります。多くの人にとっての出世作になったというのはすごいことですね。
一方でこの映画の問題点を挙げるとすれば、それは「一度しか見れない」ということに尽きますね。
あまりにもラストに見せ場を集中させているので、ラストの印象しか残らないし、ラストさえ知ってしまったら、それ以前のエピソードを振り返る必要がなくなってしまうのが惜しいです。
今回、20年ぶりぐらいに見たけど、実際ラストシーンのオチ以外なんにも覚えてなかったからね。コバヤシっていうキャラがいたことすら忘れたもん。
だからこの映画が名作かといわれると、微妙なところですよね。確かに騙されましたよ。でももう一回見たいってならないでしょ?
女性とか男性に置き換えてみたらわかりやすいと思いますよ。一度遊んだきり、もう二度と会いたいと思わない相手をいい女、いい男と呼べますかっていう話なんですよ。
その一度は最高だったよ。でも実際どんなことをしたかはほとんど覚えてないっていうね。例えるならそんな映画ですよ。
ユージュアル・サスペクツのネタバレとトリビア
カイザー・ソゼの名前の由来
カイザー・ソゼはもともと実在した殺し屋ジョン・リストをモデルにしたそうです。ジョン・リストは一家を殺害し、逮捕されるまでに18年間も姿を消した凶悪犯ですが、カイザー・ソゼのエピソードはそれをモチーフにしたものです。
そんな凶悪犯をモデルにしたカイザー・ソゼの名前は脚本家クリストファー・マッカリーの元上司の名前がカイザー・スメだったため、その響きの良さを気に入って付けたそうです。スメをソゼに変えたのは上司の評判を落とさないようにといった気遣いだったようです。
出演者たちも犯人の正体を知らなかった
5人の容疑者たちも演技をしている最中、誰が本当のカイザー・ソゼなのかを知らされていなかったというのは有名な話です。
そのためブライアン・シンガー監督はそれぞれにお前がカイザー・ソゼだ、と言い聞かせていたそうです。自分がカイザー・ソゼだと信じてやまなかった俳優のガブリエル・バーンは真相を知ってブチ切れたそうです。
ベニチオ・デル・トロのセリフはほとんど理解不能
ベニチオ・デル・トロ扮するフレッド・フェンスターは、出自がはっきりしない移民という設定で訛りの強い英語を喋るのが特徴ですが、彼はあえてアドリブで何を言っているのか分からないぐらいひどい訛りで喋り、ほかのキャストの生の反応を引き出そうとしたそうです。
犯人の正体は名前に隠されていた
カイザー・ソゼの「ソゼ Soze」とはトルコ語の「sözel」から来ていて、「お喋り」といったニュアンスがあるそうで、ロジャー・キントのニックネームが「バーバル(口先だけ/お喋り)」なのはそのせいです。だからトルコ人にとってはすぐ答えが分かるらしいです。
ロジャー・バーバル・キントの所持品に答えがあった
ロジャー・バーバル・キントが警察署を出るときに受け取る、所持品に中にゴールドの時計とライターがありますが、実は同じものをカイザー・ソゼが回想シーンでも使っていました。
まとめ
ふと思ったんだけど、冷静に考えると、あれだけ事件に深く関わっているロジャー・バーバル・キントを警察があんな簡単に釈放するのっておかしくないですかね?
誰がカイザー・ソゼかはさて置き、密輸船で起こった爆発事件に関わったことは確かなんだし、自ら証言もしてるのにロジャー・バーバル・キントを逃がす警察の緩さって一体なんなんだろう。
みんなラストで驚いたせいで、その辺のことどうでもよくなってませんか?
コメント
>あれだけ事件に深く関わっているロジャー・バーバル・キントを警察があんな簡単に釈放するのっておかしくないですかね?
確か議員を通じて圧かけて釈放→不自然に思ったクイヤンが釈放直前に無理やり尋問という流れだったと思います