演技が素晴らしく、ストーリーがリアルな麻薬と家族のドラマ。見たら落ち込むこと間違いなしです。62点(100点満点)
ビューティフル・ボーイのあらすじ
優等生でスポーツ万能、才能豊かな学生として将来を期待されていたニック。しかし彼は、義理の母親、幼い弟たちにとって“いい息子・いい兄”であることがいつも求められていた。そんな日常の中で、つい手を出してしまったドラッグ。断ち切ろうと思いつつも、禁断の誘惑に抗えない自分を恥じる気持ちから、次第にエスカレートしてゆく……。
“誇りに思ってほしい”と痛切に願うニックの更正を、大きな愛と献身で包み込むデヴィッド。何度裏切られても、息子を信じ続けることができたのは、すべてをこえて愛している存在だからー。
ビューティフル・ボーイのキャスト
- スティーヴ・カレル
- ティモシー・シャラメ
- ジャック・ディラン・グレイザー
- ザカリー・リフキン
- クエ・ローレンス
- モーラ・ティアニー
- エイミー・ライアン
- ケイトリン・ディーヴァー
ビューティフル・ボーイの感想
フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン監督による家族ドラマ。麻薬中毒の息子を持つ父親が、施設に入退院を繰り返す息子をなんとか救おうとする話です。
偶然にも「ベン・イズ・バック」と設定が酷似していて、「ベン・イズ・バック」がお母さん目線の話なら、こちらはお父さん目線の物語になっています。
例えば、両作品とも設定がこんな感じになっています。
- 主人公には若くて麻薬中毒の息子がいる
- 息子の両親は離婚していて義父、または義母がいる
- 新しい妻、または旦那の間に別の子供がいる
- 麻薬中毒の息子は施設に入っても結局麻薬をやめられない
- 息子が麻薬の過剰摂取で生死をさまよう
- 母親、または父親が悲しむ
両作品の大きな違いは、「ベン・イズ・バック」はリアリティーのないフィクションなのに対し、本作はリアリティー満載のノンフィクションであるということです。
ちなみにこちらがデヴィッドとニック親子。父親のデヴィッドはライターでジョン・レノンの生前最期のロングインタビューをした人物。
息子のニックは脚本家で、Netflixの人気ドラマ「13の理由」を手掛けたりもしています。
タイトルの「ビューティフル・ボーイ」はジョン・レノンの同名曲から取っていて、息子を溺愛する父親を表しています。
ストーリーは、勉強がよくできる優等生だった高校生のニックが刺激を求めクリスタル・メスに手を出したことをきっかけに転落していく様子を描いていきます。
一度、シャブに手を出してしまったら最後、たとえ周囲がどんなに手厚いサポートを与えても麻薬中毒患者を救うことは難しい、という現実をリアルに表現していました。
ニックは施設に入り、治療を受け、改善したかと思ったら、大学進学を機にまたも麻薬に手を出し、完全なるジャンキーになっていきます。
たとえ施設を変えても、父親の家から母親の家に引っ越しても、結局ニックの体は再び麻薬を求め、注射器を腕に刺してしまう、、、というのがあらすじです。
離婚後、父親が親権を持ち、再婚した新しい妻とともにトラブルメーカーの子供を育てていく状況が興味深く、世の中のシングルファザーやお父さんの胸に突き刺さる内容になっていました。
父親は、雨の中ハイになって街の中をさまよう息子を探しに行ったり、飛行機に乗って遠くの街でぶっ倒れた息子を病院まで引き取りに行ったりします。
父親が息子を救っては、また息子が麻薬に手を出し、また救っては薬に手を出す、という延々のループ。愛情を注げたからといってまともに育ってくれるとは限らない、子育ての大変さが伝わります。
父親役を演じたスティーヴ・カレル、息子役を演じたティモシー・シャラメの二人とも素晴らしい演技をしていて見ごたえ十分でした。
スティーヴ・カレルは「ラブ・アゲイン」のようにコメディ俳優のイメージが強いけど、ちゃんとシリアスな演技もできるからね。
一方のティモシー・シャラメは「君の名前で僕を呼んで」ではゲイ役を、本作ではジャンキー役をこなすなど、若いのに難しい役に果敢に挑戦していて尊敬します。
一番、僕が好きなシーンは、お父さんが何度も何度も同じ過ちを繰り返す息子に対して「俺はもう助けない」と意思表明する下りですね。
父親としては助けたい気持ちはやまやまだけど、自分の今の家族も守らないといけない。何度救いの手を差し伸べてもキリがない。このままだと自分が壊れてしまう。
これまでしてきたことが息子のためになっているのかどうかも信じられなくなったとき、もう自分にできることはない、と実の息子を突き放すお父さんの心情を察すると、同情しか湧いてきませんでした。
子供が道を踏み外すと、親の責任にされがちな世の中ですが、必ずしもそうとは言えない状況があって、麻薬中毒のような病気はその一つでしょう。
特にアメリカの学生だったら必ず通る道、あるいは誘惑の一つなので、意志の強い弱いにかかわらず、いつ誰が中毒になってもおかしくないですからね。
本人は真面目でも、たまたま付き合った恋人がジャンキーだったら一貫の終わりだし、大学のルームメイトや友達に誘われて始めてしまう、というパターンも少なくないでしょう。
そういう問題を視聴者にこれでもかというほど突き付けていて、決してハッピーエンドにしていないところに好感を覚えました。
ただ、つらくて悲しいだけの映画なので、ぜひ見てよとはならないタイプの作品ですね。もの好きが見ればいいかな。田代まさしやノリピーのノンフィクション映画を好き好んで見るみたいな話だからね。
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