キモくてちょっぴり色っぽい映画。3人の子供を家から一歩も出さずに育てる、という設定が斬新で物語の中で十分なリアリティーを構築しているのがすごいです。52点(100点満点)
籠の中の乙女のあらすじ
ギリシャの郊外にある裕福な家庭。一見普通に見えるこの家には、他人の知らない秘密があった。父(クリストス・ステルギオグル)と母(ミシェル・ヴァレイ)が、長女(アンゲリキ・パプーリァ)、次女(マリア・ツォニ)、長男(クリストス・パサリス)3人の子どもたちを、外の世界の汚らわしい影響から守るためにと、ずっと家の中だけで育ててきたのだ。
邸宅の四方に高い生垣をめぐらせ、子どもに“外の世界は恐ろしいところ”と信じ込ませるために作られた厳格で奇妙なルールの数々。学校にも通わせないその様子は外の世界からすれば異常なことだったが、純粋培養された従順な子どもたちはすくすくと成長し、幸せで平穏な日々が続いていくように見えた。しかし、成長につれて好奇心を芽生えさせた子どもたちは、恐怖を覚えつつも、次第に外の世界に惹かれてゆく……。
(goo映画より)
籠の中の乙女の感想
「ロブスター」、「聖なる鹿殺し」でお馴染みのヨルゴス・ランティモス監督による、とある家族の独自の世界、生活を描いた、アイデアだけで勝負しているクリエイティブな低予算映画です。
興味深い映画である一方、夫婦の異常な教育方針の意図するところが理解できず「なんでそうなるの?」と言いたくなるシーンも多いです。
頭のおかしい夫婦は、外の世界は危険だからと息子たちを家の中に閉じ込めるなど厳しすぎる躾を強いているかと思えば、性に関してはオープンに自由奔放にやらせていたのが奇妙でした。
外の情報を全く持っていないだけに彼らにとって性行為は「交尾」そのものといった味気のないやり方なのがやけにリアルで、自分たちの身体について自然と欲望に身を任せて理解しようとする無邪気な姿が気持ち悪さを倍増させています。
一番の突っ込みどころはなんといっても、いい歳した若い兄妹たちが家を囲む塀を全く登ろうとしない、もしくは門の隙間から出ていこうとしない、というあまりにも両親に従順すぎる機械的な態度ですね。
子供たちから「反抗」の意識が全く見えないのが少し不自然でした。子供は親に執着し、反抗を覚え、そして自立していくのが通常の成長プロセスだとすればその全てを取っ払った感がありましたね。家が高い塀で囲まれていようと、子供の時から外は危険だと教えられようと、人間はやっぱり本能的に外に出ていくじゃないのか。あんなに臆病なはずはない、とそう思うのです。
しかしながらこういう映画は登場人物の異常さやキモさを楽しむ映画で、その点ではかなり成功していると言えます。「っていうかこの人たち、キモいんですけど」などと言いながらみんなでワイワイ見ればそれでいいのです。
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