演技、会話の自然さが絶妙なぽんこつ姉弟による家族ドラマ。笑えるだけでなく、感動すら覚えます。82点 (100満点)
ユー・キャン・カウント・オン・ミーのあらすじ
サミーとテリーは子供のときに両親を交通事故で亡くした姉弟。二人はスコッツビルで生まれ、この場所で育った。
ある日、長い間行方をくらましていたテリーがスコッツビルに帰り、サミーと久しぶりの再会を果たす。しかし故郷に帰ってきたばかりだというのに刑務所に入っていたなどとカミングアウトし、挙句の果てには金を無心する弟に姉は絶句。感動的であるはずの二人の再会は期待外れのなんともぎくしゃくしたものになってしまう。
それでもテリーはサミーの家に泊まることになり、サミーの息子と一緒に時間を過ごしているうちに少しずつ打ち解けていく。テリーが相変わらず無計画な日々を過ごす一方、サミーも上司と不倫をしたり、寂しさを紛らわすために元恋人を利用したりと、非建設的な生活をただ繰り返していく。
ユー・キャン・カウント・オン・ミーの感想と評価
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」などでお馴染みのケネス・ロナーガン監督のリアルな家族物語。問題あり、訳アリな姉弟の微妙な関係性をコミカルに描いた人間ドラマで登場人物の設定が絶妙です。特に真面目かつ善人ぶるくせに非道徳的なことをしてしまう姉サミーの性格はあまりにはリアルでした。
物語は、姿をくらましていたトラブルメーカーの弟が、ある日ひょっこり姉の下を訪れ、懐かしいと思ったのもつかの間、帰ってきた早々やらかしまくり、やっぱりうんざりする、という流れになっています。
家族話ではあるあるじゃないですかね。久々に里帰りしたはいいけど嬉しいのなんて最初の一日だけ。翌日からそういえばこんな感じだったわ、と相手の癖を思い出し、三日も経てばイライラが募ってもう二度と帰ってくるかと思うっていうパターンね。それをユーモアを交えながら決して大げさではなく、リアルに表現していました。
この映画の場合、ストーリーで笑わすというより、登場人物のキャラで笑わすタイプのコメディで、こういう男、こういう女いるよなあ、と思わず呟いてしまうほど共感できるはずです。
いわゆる「いい人」と「悪い人」とに分けるのではなく、「いい人のように見えるけど悪いこともするし、かといってときどき優しくもなる」というキャラ設定の細かさが嬉しいです。
サミーは妊娠中の妻を持つ上司と不倫しているくせに、弟には牧師を紹介して改心しろと説得する、といった物差し、道徳がブレブレの姉です。
元恋人を利用するだけ利用しておいて「でも私たち友達だよね?」とさらりと言ってのけるのも笑えました。
ああいう女を見ていると、たとえ映画だろうがむしょうに腹が立つんだけれども腹が立っているということはその時点でサミー役を演じている女優ローラ・リニーを認めていることになりますね。映画を見ていて腹が立つ女優というのはある意味感動させられる女優よりも上手のような気がします。お見事です。
一方、弟を演じたマーク・ラファロもいい仕事をしてくれました。特に草を吸ってから姉と対面したときのレストランでの演技はすばらしいの一言に尽きます。この頃からマーク・ラファロはダメを男を演じさせたらハリウッドでは右に出る者がいないほどのパフォーマンスを見せていますね。
最後に監督。アメリカ人は笑いが大雑把なんてよく思われがちだけど、この監督はところどころに細かい笑いを散りばめていてさすがだなあと感心しました。
それに普通の監督ならサミーのような理解不能な女を登場させませんよね。さてはこの監督、相当悪い女と付き合ってきたなあ。
コメント
マークラファロといえば、宇宙大戦のみどり色の無敵巨人だ!
こんな映画に出てるんですね。
この監督のケイシーアフラックは観てて、映画男先生のそこのコメント読んで、ここを読みました。
これは観ます。