幼い頃の淡い思い出が、あることをきっかけに性的虐待事件へと発展していく生々しいの実話。色々と考えさせられます。66点(100点満点)
ジェニーの記憶のあらすじ
ジェニファーはドキュメンタリー監督として活躍するキャリアウーマン。ある日彼女の母が、ジェニファーが13歳の時に書いた“物語”を読んでしまう。そのことをきっかけに、ジェニファーは当時の“年上の彼”との恋に対して、ある疑念を抱くことになる。曖昧だった彼女の記憶を辿った先に待つ、衝撃の事実とは―。彼女はなぜ、初恋の記憶に鍵をかけなければいけなかったのか?
スターチャンネルより
ジェニーの記憶の感想
ドキュメンタリー監督のジェニファー・フォックスが実体験をもとに描いた性的虐待ドラマ。ヒロインが自分自身の記憶をたどり、美しい恋愛だと思っていた昔の思い出が実は悪夢だったと気づくトラウマストーリーです。
物語は、ジェニファーの母親が家にあった大昔の娘の日記を読み、ジェニファーの初恋がただの恋愛ではなかったことに気づき、大騒ぎするところから始まります。
ジェニファーは現在40代後半。大学の教壇に立ち、ドキュメンタリー監督として性的虐待を受けたことのある世界各国の女性をインタビューしてきた経緯があります。
そんな監督本人が実は虐待の被害者ではないかと母親は、ジェニファーの13歳の頃の日記を読んでから疑うようになったのです。
ジェニファー自身はあれは恋愛だったと主張しますが、記憶は不確かで何があったのかもよく覚えていない様子。
それをきっかけにジェニファーは当時の関係者とコンタクトを取り始め、どうにか記憶の糸をたどろうとする、というのがストーリーの流れです。
取材者やインタビューアーがある事件の被害者につきまとい、質問をぶつけ、つらい記憶を呼び覚ます、という構図はよくあるけれど、この映画の場合はヒロイン(監督自身)が自分で自分のトラウマを掘り起こして余計に傷ついてしまう、という一風変わった話になっています。
考え方によってはトラウマを乗り越えようとしている前向きな行動とも取れるし、反対に自ら傷口を広げようとしているリスクの高い自傷行為とも取れそうですよね。
ジェニファーは事件として相手を起訴したいというより、自分自身を納得させたいという気持ちのほうが強そうでした。しかし母親が騒ぎ出したことが引き金となって、忘れようにも見過ごせなくなっていき、とことん真実を追いかける様子がリアルです。
一方で果たして自分の中で美しい記憶としてとどめてあった体験の真実を突き止める必要があったのか? と考えると難しい問題ですね。
本人がトラウマだと気づいていないことを、外部が騒ぎ出すことによって悲惨な体験に変換され、やがて本人まで自分を被害者として認めざるをなくなる状況がつらいです。
僕の周りでも中学、または高校時代に学校の先生と付き合っていたっていう女性が何人かいるんですよ。本人たちはその思い出を楽しそうに、あるいは自慢気に語っていました。
なんでしょうね。指導者と生徒という禁断の関係性が燃えるんですかね。本人たちにとって恋愛だったっていう解釈なら本人の問題だからいいと思うんだけど、じゃあ相手の先生からしたらどうなんだよっていうことを突き止めて行ったらロリコンだ、性的虐待だってなって事件性を帯びてくるのが、未成年恋愛のややこしいところですね。
ジェニファーの加害者の場合は常習性のある計画犯で、刑務所送りになってもおかしくない奴なんですが、ジェニファーは事件として起訴するよりも、彼がどういうつもりだったのか真相を明らかにしたい、という感じでした。
さらにややこしいのは、ジェニファーが動き出したのは事件から何十年も経った後だということです。加害者側の記憶は薄れ、加害者意識がすっかりなくなったときに被害者の記憶と嫌悪感がよみがえる、というズレが生じます。
果たしてジェニファーの決断が正解だったのかどうかは本人にしか分からないでしょう。しかしこうして一本の映画にまとめたのも、あれだけ積極的に行動に移したのもやはりドキュメンタリー監督所以のジャーナリズム精神とスピリッツがなせる業なのかなぁとも思えました。普通の人だったらなかなか何十年も前の関係者たちを自力で探して話を聞こうなんてできないもん。
自分がもしジェニファーの立場だったらどうしてただろう? 昔の話だとして目をつぶるか。あるいは怒りが込みあげてきては許せなくなるか。そう考えると、かなり意見が割れそうな話ですね。
コメント
女の子の初体験はその後の恋愛観に重大な影響があると言われています。
15〜6歳の頃の背伸びした恋愛だと思っている40代のジェニー
周りより進んでる自分と思っていた13歳のジェニー
そんなちょっとした優越感が今の地位に影響しているのかもしれない。
レイプとか性的虐待って暴力的じゃなくても起こりうること。
いまだに日本では殴られたわけではないとか、逃げようとすれば逃げられたなどと被害者を傷つける意見が多いけれど。
付き合っているつもりだったのになんか違ったようだ‥って事なら山のようにありますよね。
一方が子供だったり、立場に極端に差があるならば大人だって裁かれてほしい。
お金持ちおじさんとドライに付き合っていたつもりの昔の私も単に「いてこまされた」だけだったのかも。
あんなに若くて素敵だった乗馬の先生がものすごく老いているのがいろんな報いを受けたみたいで怖かった。
日本では自爆テロのような行いだけど、ずんずん相手に向かって行くジェニー
すでに傷ついているんだからそうするしかなかった。だいぶ時間差があるんだけど。もはや怒りのピークだから。
実話が元だそうですが映画化でかなりダメージ与えられそうなのも痛快ですね。(被害者目線)
(昔『子育てごっこ』の作者に性的虐待されたという養女と花柳幻舟が記者会見していたのを覚えています。「婚前交渉」「婚前旅行」という言葉が当たり前にあった頃の日本‥)
事件性を含むのかどうかというのは難しい判断ですよね