何度見ても楽しめる、極めて完成度の高い娯楽映画。 最初から最後まで休みなく急ピッチに話が進んでいく、あのリズム感がなんともいえないです。90点(100点満点)
マグノリアのあらすじ
クイズ王の天才少年スタンリー、人気司会者のジミー・ゲイター、癌に冒され臨終を控えている大物プロデューサーのアール、迫り来る夫の死が受け入れられない若妻のリンダ、女の口説き方を伝授するナンパ界の教祖フランク、おっちょこちょいな警官ジム、コカイン中毒の女クローディア、バーテンの若い男に恋心を抱く中年男ドニーなど、LAを舞台に様々な苦悩を抱える不器用な人間たちが忙しく、エキサイティングな一日を繰り広げる。
訳ありの過去を持ち、後悔に苦しみながらも彼らは自分なりのやり方で状況と折り合いをつけようとする。
マグノリアの感想
「ファントム・スレッド」、「インヒアレント・ヴァイス」、「ザ・マスター」、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」、「パンチドランク・ラブ」、「ブギーナイツ」、「ハードエイト」で知られるポール・トーマス・アンダーソン監督による傑作群像劇。
こんなにいい作品がこの監督から生まれたのはまぐれなのか? それとも実力か? 公開から長い年月が過ぎた今でもなんともいえないところがあります。
いずれにしろこの映画は簡単に話の中に吸い込まれてしまい、3時間を越える上映時間が全く気にならない名作です。「偶然」や「後悔」などをテーマにした点においてもセンスがいいです。
アメリカ映画の中には「自分がやってきたことは間違っていなかった。私は自分の人生を全く後悔していない」といった考えのものが多く、実際それがかっこいいと思っているアメリカ人も少なくないです。
そんな中で、過去を振り返ってうじうじ悩んでいる、未練たらたらの人々を取り上げたところが意外で面白かったですね。
過去の汚点は棚に上げて、自分の人生をただ成功だったと自信満々に語る人より、「もっとあいつに優しくしておけばよかったなあ、私ってバカだなぁ」と嘆いている人間の方がずっと正直だし、同情できますね。
俳優陣も文句なしでした。ジュリアン・ムーアも相変わらずの仕事ぶりでしたが、一番いい仕事をしたのは間違いなくトム・クルーズでしょう。もう最高のパフォーマンスでした。
父親との再会シーンは圧巻。自分の父親が死にそうなのに「死んじまえ、このクソ野郎!」とかいう映画なんて今まで見たことなかった。
それだけに余計に悲しくて、悲しくて。それ以上に黒人記者のインタビューに応じている最中に徐々に表情を曇らせていくあの迫真の演技には度肝を抜かれた。あのシーンは何度見てもすごいです。
蛙が空から降ってくるシーンですが、あの部分については様々な憶測が流れましたね。特に有力だったのが「聖書から引用した」というもの。しかしポール・トーマス・アンダーソン監督は後にあるインタビューでその説を否定しています。
たまたまそういうアイデアが浮かんだだけで、聖書に載っているとは知らなかったそうです。なんでもかんでも聖書だ、コーランだ、といって深読みする人たちってどうにかならないんでしょうか。かなり面倒臭いです。
全体的には不幸な人たちに焦点を当てていて、話が進むにつれてどんどん内容がドロドロしていく。でも、きちんとハッピーエンドで締めているところがまたニクイ。
ラストシーンは麻薬中毒で、実の父親に悪戯された経験を持つクローディアの「笑顔」なんだけど、最初から一度も笑わなかったクローディアが最後の最後で微笑んだ、あれだけで暗いはずの映画がパッと明るくなった気がしますね。
面白いので何度も見たんですが、一度自動車免許の教習所の合宿先の部屋で、同期の生徒を集めてみんなで見たことがあります。
20歳前後の男女たちが狭い部屋でぎゅうぎゅうになりながら、この映画についてああでもない、こうでもないと語り合ったのは今ではいい思い出になっています。
そのときのメンバーたちの中から合宿中に何組もカップルができたんだけど、きっとこの映画がそうさせたんだと思いますね。だって興奮するもん。
コメント
トムがすごいに同感です。
いや、他の方々も勿論素晴らしいですけどさ。
私も好きな作品ですが、蛙が降ってくるあたりでちょっとついていけなくなった記憶。蛙を気にしすぎちゃいけないとは思いつつ・・・。
DVDあるので観なおしてみようか、と思いましたです。
Pさん
ぜひDVDで観なおしてみてください。トムはこの映画で男を上げましたね。僕は蛙のところも結構好きです。なにが起こっても不思議ではない世界という感じが強調されていてよかったと思います。
はじめましてこんばんは
リンクの件了解です。
こちらこそよろしくお願いいたします。
内容の濃いレビューで参考になります。
この作品観た事が有ります。
やはり蛙の振ってくる所で驚きました。
竜巻などでそういうことも有りだとだいぶ後で知りました。
富豪の臨終のシーンを何となく思い出します。
トムクルーズは別人の様でしたね。
ワトソンさん
リンクありがとうございました。こちらも張っておきましたので。これからもよろしくお願いします。コメント待ってます。
とんでもない映画に出会った気分になりました
ビッグリボ薄きに出会った気分になりました
この作品はアルトマンの「ショートカッツ」に影響され作られたモノと捉えています。
「ショートカッツ」を観た後に「マグノリア」を観るとまた違った感じになるでしょう。
とんさん
コメントありがとうございます。ショートカッツもいいですよね。
雨のシーンもう一回見たくなる
なんで最後にカエルなのか、さっぱりわからない話でした。
カエルが降ってくる世の中のバカバカしさを目の当たりにして、登場人物たちが悩むのを止めたような感があって、僕には非常に効果的な演出だと思えました。
なんでカエルが降ってきたのか全く分からず、理解できませんでした。
カエルが降ってきて、ムカつきました。
ハリケーンでカエルが空に巻き上げられたのか?
トムクルーズのセックス教祖は凄かったですが、カエルについて行けなかった。
どう理解したら良いのでしょうか?
そんな思い出です。
カエルが降ってきたことで、登場人物たちがそれぞれ自分たちの抱える悩みなどちっぽけのものだと感じたかのように、清々しい顔をしたのが印象的でした。理解するとかよりも、彼らがあのときどんなふうに感じて。何を思ったかを想像するのが面白いんじゃないでしょうか。
今年見た新作・旧作の中で一番面白かったです、一生この映画しか見ちゃダメって言われても全然良いと思える作品に初めて出会いました、それをお勧めしてる映画男さんには感謝が尽きないです、さすが映画男と名乗るだけあると思いました笑 これから映画男さんのお勧めもっともっと見ます!
気に入っていただけて嬉しいです。もっとおすすめ映画見てくださいね。
映画男さんのブログでこの映画の存在を知りました。3時間という長さが気にならないほどにとんでもなく面白かったです。
もしよろしければ映画男さんのセンスで群像劇の作品のみに限ったランキング記事を読んでみたいです。ほかの方の需要はわかりませんが、自分は絶対に紹介された映画を全部見るので笑。
ざっと思い浮かぶのはこんな感じです。感想お待ちしております
バベル
大神のゆらぎ
ハピネス
牝猫たち
ラブアゲイン
彼女を見ればわかること
愛する人
さよなら歌舞伎町
彼女の人生は間違いじゃない
愛の渦
ディス/コネクト
リトルチルドレン
ラブ・アクチュアリー
犬猿
コンティジョン
パルプ・フィクション
恋人たち
愛がなんだ
わざわざありがとうございます、感激です。
知らない作品ばかりで今から見るのが楽しみです。