爆弾テロで両脚を失った男性が文字通り自分の脚で立ち上がっていくまでを描いたちょっといい話。決してきれいごとだけを描いていないところに好感が持てました。69点(100点満点)
ボストンストロング~ダメな僕だから英雄になれた~のあらすじ
2013年4月、ジェフ・ボウマンは恋人のエリンがゴールする姿を見届けるため、ボストンマラソンのゴール付近にいた。ボウマンは挙動不審な男を発見したが、その後すぐに爆弾が爆発した。
爆発に巻き込まれたジェフは、両足を失うほどの重傷を負い、意思の疎通にも困難をきたす状況にあったにも拘わらず、必死の思いで犯人の風貌を警察に伝達した。
ジェフの証言もあって、4日後にテロ事件の犯人は逮捕された。彼の勇気が全米中で称賛されていた頃、ジェフは両足を失ったという現実に直面していた。失意のうちにあったジェフだが、義足を使ってもう一度自力で歩くべく、リハビリを開始した。
wikipediaより
ボストンストロング~ダメな僕だから英雄になれた~の感想
デヴィッド・ゴードン・グリーン監督による、ボストンマラソン爆弾テロ事件の被害者の再起を描いた人間ドラマ。同名ノンフィクション本を基にしたリアリティーのある感動的な話です。
物語は、元カノを応援するためにボストンマラソン観戦に行ったジェフがテロの被害に遭い、両脚を切断したことで生活が一転する様子を描いていきます。
ジェフはテロの攻撃を生き延びたことで世間から英雄扱いされることに違和感を覚え、やがてメディアのインタビューやスポーツイベントに招待されて人前に出ることに疲れ果てます。
周囲が自分を励まそうとすればするほど、冷ややかな気持ちになり、どこか自分の感情を殺すようになっていきます。
そんな彼を支えるのがかつて交際していた恋人エリン。エリンは自分の走る姿を応援しに来てくれたジェフを放っておけず、事件後から付きっきりでジェフの面倒を見るようになります。
自分を必要としてくれるジェフにエリンは再び特別な気持ちを持つようになり、ジェフの母親と一緒に三人で暮らし始めることに。
しかしジェフはお酒に走ったり、自暴自棄になったり、同棲生活は困難ばかり。そんな中、エリンのジェフの子供を妊娠する、というのがストーリーのおおまかな流れです。
怪我から主人公が再起を図る物語ですが、ラブストーリー仕立てにうまくまとまっていました。皮肉にもテロの被害に遭ったことで絆が深まった男女を美談やきれいごとだけじゃなく、現実的な出来事を基につづっています。
特にジェフの周囲の人間たちがいい人たちばかりといった嘘っぽい環境にしていないのがリアルです。お母さんを含め、おっさんおばさんたちの下品な感じとか、ジェフのために彼らがよかれと思ってやる一連の迷惑な行為があるあるすぎて笑えます。
両脚を失った人間に対してみんなどうやって接していいか分からないもんだから、とりあえずパーティーを開いて騒いだり、お酒を飲んで忘れようとしたり、「お前はヒーローだ。誇りに思うよ」と言って励ましたりする様子がアメリカっぽくていいです。
テロの被害者としてジェフが地元のアイスホッケーのオープニングイベントに呼ばれたりするんですが、観客が大声援を送ったり、感動したりしている一方で本人は実は戸惑い、疲れ果てていたという下りは、視聴者に新しい気づきを与えてくれそうです。
訳もなく褒め称えられたり、励ましの手紙をもらったりしても、いいからそっとしておいてくれよっていう時ももちろんあるんでしょう。
それでも笑顔で前向きに生きている強い自分を人前で見せないといけない苦しみ。英雄という象徴になりつつあるプレッシャー。
そんな主人公の葛藤を様々なエピソードを用いて上手く伝えていました。主人公を演じたジェイク・ギレンホールはいい仕事しましたね。そんなに好きな俳優っていうわけじゃないんですが、この映画におけるパフォーマンスは素晴らしかったと思います。
ちなみにこちらがジェフ・バウマンとエリン・ハーレイ本人。
それにしても恋人のエリンはよくジェフを見捨てずに付き合い続けましたねぇ。事件当時は恋人関係じゃなかったんだからあそこまでジェフを献身的に看病してあげることもないんですけどね。
命の危険にさらされてお互いの大切さに気づいたということなんでしょうか。破局したはずの男女がテロによって離れられなくなっていくなんて男と女は分からないもんですねぇ。
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