ロシア五輪代表のドーピングの実態を関係者の証言に基づいて暴露した衝撃のドキュメンタリー。ロシアって怖いなあって思うこと間違いなしです。79点(100点満点)
映画イカロスのあらすじ
映画監督のブライアン・フォーゲルはアスリートのドーピング問題についてのドキュメンタリー映画と撮ろうとしていた。彼自身がアマチュアロードレーサーであることから、ブライアンは大会に向けて自分の身体にステロイドを注射し、医者の助けを借りてドーピングテストをパスできるかどうか試してみることに。
ブライアンはドーピングテストを欺くためにUCLAのドクターに頼んだものの評判を損なうリスクがあるとして、あるロシア人ドクターを紹介される。
そのドクターとはロシア五輪チームのドーピングプログラムを取り仕切る第一人者のグレゴリー・ロドチェンコフ。ブライアンはグレゴリーの指示に従って注射を打ち、尿を取るなど、グレゴリー・ロドチェンコフにアドバイスを受けているうちに友情を深めていく。
やがて開かれた大会でしかしブライアンは期待していたような結果を出せず、ドーピングのパフォーマンス向上効果を証明できずに終わった。
ところがその直後、世界中でロシアのドーピング問題が報じられるようになり、グレゴリー・ロドチェンコフの立場が危うくなっていく。
危険を察知したブライアンはグレゴリー・ロドチェンコフをロシアから脱出させ、アメリカで匿うことに。ついにロシア当局から命を狙われることになったグレゴリー・ロドチェンコフはロシア政府による五輪選手たちの衝撃のドーピングの実態を明らかにする。
映画イカロスの感想
2018年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門ノミネート作品。ブライアン・フォーゲル監督によるロシアのドーピングの実態を暴露したスパイドキュメンタリードラマで、スノーデン事件を追った「シチズンフォー」以来の衝撃の内容になっています。
最初は、「ばれるかどうか試しにドーピングしてみた」的な実験的なノリで進んでいくんですが、途中から話のスケールがどんどん大きくなって最後は見事なスパイ映画へと昇華します。
それもそんじょそこらのスパイ映画より、何倍もハラハラドキドキします。おそらく監督も最初はこんな映画になるとは思ってなかったでしょうね。まさに偶然が重なって生まれた作品じゃないでしょうか。
五輪のドーピング問題にロシアの諜報機関KGB(現FSB)が関わっているとは想像もしていませんでした。ロシアの選手たちがパフォーマンス向上のため違法薬物を使っていることは前々から噂されてきましたが、まさかここまでひどいとはね。
ドイツのTV局ARDがまとめたドキュメンタリーによると、99%のロシア選手がドーピングに違反してるとのことです。つまりほぼ全員。
そしてロシア五輪代表のドーピングを指揮っていた張本人グレゴリー・ロドチェンコフ本人の証言では彼の知る限り過去の五輪において半分以上の選手はドーピングをやっていたと衝撃のコメントを残しています。
特にひどいのがソチ冬季五輪でのこと。アンチドーピング施設とKGBの建物が向かい側にあって、全選手のクリーンな尿が倉庫に保管され、ドーピングテストが実施されるときに入れ替えられていたそうです。
そんなことできるのかよって話ですが、説明を聞くと十分に納得できる詳細に渡る解説と再現VTRになっています。
国ぐるみの計画された犯行なので、もちろんプーチン大統領が知らないということはありえないそうです。なぜならかつて権威を奪われ、刑務所にいたグレゴリー・ロドチェンコフをドーピングプログラムのトップの座に付かせたのはほかでもないプーチン大統領本人だからです。
ロシアのドーピング問題が世界中で報じられるようになると、ロシア政府は口封じを図ろうとします。グレゴリー・ロドチェンコフの友人であり、同じくドーピングプログラムに関わっていた職員が謎の死を遂げます。死因は心臓発作。どういうことかは想像に難しくないはずです。
まもなく自分の命もやばくなってきたと感じたグレゴリー・ロドチェンコフはアメリカ当局に出頭し、今もなおFBIの保護下に置かれているそうです。
しかしながらアメリカに潜伏しているKGBのエージェントが当然いるだろうから、彼は今後も常に危険と隣り合わせの生活を強いられることになりそうです。それもロシアに家族を残してきてるっていう残酷さ。きついなぁ、そんな生活。
五輪の成績によって大金が動くのもあるんでしょうが、それよりもロシアからは自分たちの国の力を世界に知らしめたい、という異常な自己顕示欲を感じます。そのためなら手段を選ばないというのがいかにもですね。
そう考えると、薬漬けの奴らと勝負して普通に勝っているその他の国の選手たちってすごいですよね。日本人もほとんどドーピング違反にならないけど、ナチュラルで戦ってあんなにメダル獲れるって相当能力高くないですか?
ただ、ドーピングは後々発覚することが多いから、今みんなが応援しているアイドル選手も数年後には実は真っ黒だったことが判明するかもしれないし、そうなってくると五輪そのものに熱狂できなくなってきますよね。
もうここまで蔓延してるなら、いっそのことドーピングOKでやったらいいじゃんって思ってきますね。むしろ東京五輪からはドーピングしないと出場できないってことにしたらどうかな。
男はみんなムキムキで、女はヒゲボウボウで参加して、薬を打ちすぎてバタバタ死者が出るっていうね。今大会の死者は前大会の倍でしたとか言って統計取り出したりなんかしてね。
可能性は低いけれど、この映画自体がでっち上げの可能性もないこともないでしょう。全てはロシアを陥れるためのアメリカの陰謀だったりして。これでロシアが潔白だったら余計に恐ろしいし、もう誰を信じていいのか分かりません。
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