死を目前にした若者の最期のひとときを描いたリアリティーに欠ける話。悪い意味でとても西洋的な映画です。40点(100点満点)
死ぬまでにしたい10のことのあらすじ
23歳のアンは、夫と二人の娘とトレーラーハウスで慎ましく暮らしていた。アンはある日突然病に倒れ、病院に行くと、医者から余命2,3ヶ月と宣告される。
そこでアンは家族には事実を隠すことにし、コーヒーショップで死ぬまでにしたい10のことをリストアップしていく。さっそくやりたいことを実行に移していく彼女は、コインランドリーで孤独の男リーと出会い恋に落ちる。
死ぬまでにしたい10のことの感想
「エレジー」、「ナイト・トーキョー・デイ」で知られるイザベル・コヘット監督による女が死ぬ前に我ままを言う人間ドラマです。
どうせ死ぬんだからやりたいことをやろうというのはわかるけど、そのしたいことのリストを見ていくと笑えます。
その中に「(旦那以外の)他の男と寝る」というのがあり、あれ?と思いましたね。
人はもうすぐ死ぬとなると、どんなわがままでも許されると思っているふしがあるけど、それは大間違いで、いくら死ぬからといってなんでもやっていいなら美しくもなんともないじゃん。
だったらなんだよ。リストだってこんなんでいいわけ?
- 高校生にイタズラする
- 通りがかったむかつく奴を刺す
- おばあちゃんを引っ叩く
- 食べたいものを無銭飲食する
もうすぐ死ぬんであっても死ぬまでは生きているんであって、それまでは自分のやることは全部自分の責任内でやってもらいたいですね。
そして、死ぬまでにやりたいこととは、いわばやったことがないけど、常々やりたいと思っていたことに違いないから、アンは常々他の男と寝たがっていた、ということなのんでしょう。
万が一このリストを夫が見たとしたら、それはそれは傷つくだろうな。ああ、怖い。
まあ、人間だから漠然と他の相手としたらどうなるんだろうかという欲望があるのは仕方ないでしょう。
ただ、余命数ヶ月の重病を抱えた状態でそんなに性欲が沸くのかなあっていう話ですよね。普通に考えて、そんな元気ないだろ。
リストアップされた多くの願いがアン個人の願いであるのが個人主義の西洋文化モロだしだなあと思えました。家族や夫と一緒にしたいこととかないんだね。
死ぬまでに一度でいいから、どこどこを家族で散歩してみたい、っていう言葉が出てこないってことは幸せな家庭じゃなかったのかな。
最後の方では夫が近くに引っ越してきた女と仲良くなってくれてよかったみたいになるけど、これも代わりさえ見つかれば万事OKのような発想から成り立っていますよね。
本来夫婦とは代わりなどいない存在なはずなのに、取り替えられるという考えがいかにも西洋的。
全部自分中心で話が進んでいくくせに映画の本題がMy Life Without Me(私抜きの私の人生)というのだから笑いものでしかないです。これだったらMy Lifeでいいじゃねえかよ。
コメント
映画男様
この映画は公開当時、お洒落女子映画的扱いをされていたような記憶があります。私は「死を宣告された主人公が精いっぱい余生を生きる」類の映画が
苦手なので相当後になって、レンタルで見て、特に感慨は受けなかったのですが・・・。
「時間制限なしで夫とセックスしたいと言えないのだろうか」
目からウロコでした。ちょっと感動しました。
このヒロインは、命を失うのは自分なのにどこか傍観者的な感じで、生死のさなかの気違いじみた感情が何も伝わってこなかったのを思いだしました。
映画男様のレビューを読んで、前に見た映画のことを思い出すのも楽しみになっています。
これからもよろしくお願いします。
trinさん
コメントありがとうございます。お洒落女子映画で面白い映画ってほとんどないですよね。寒いだけです。
この映画、旦那さんが素敵!て思いました。子どもたちもとってもかわいいし😍憧れました。だけど主人公が一番素敵だなと思ったのは、本当に誰にも自分が死を迎えようとしてることを伝えずに、やりたいことを全てしてから死んでいるというところ。自分にはきっとそんなことできない。強い女性だからできることだなと思いました。題名はきっとMy LIFEでいいと思います。
なかなか隠し通すのはできませんよね。