アメリカのカルト的大人気サスペンスシリーズの最新シーズン。シーズン2から25年後の世界を描いた、SFと刑事ドラマをミックスさせたような独特な作品です。
ツインピークス・リミテッドイベントシリーズのあらすじ
ブラック・ロッジにてローラ・パーマーはFBIのデイル・クーパー特別捜査官にこう告げる。
「私はまた25年後にあなたに会うわ」
それから時が立ち、現在のニューヨークで、とある青年が透明のボックスをカメラで監視する仕事に就いていた。
一日中ボックスの前で座り、何か異変がないかを調べるのが彼の仕事。といっても何が起こるわけでもなく、彼は一日中延々とソファーに座りながら透明のボックスを眺めているだけだった。
そこには彼以外の者が立ち入るのは禁止されているものの、ある日警備員の姿がないのをいいことに彼の恋人が中に入ってしまう。
二人がソファーに座って性行為を始めようとすると、突然ボックスの中から得体の知れないものが現れ、二人を殺害する。
一方、サウスダコタ州バックホーンに位置する、とあるアパートのビルでは女性が隣人の部屋から異臭を嗅ぎ付け、警察に通報する。警察官が駆けつけると、そこには首を切断された女性の死体がベッドに横たわっていた。
部屋からは無数の指紋が見つかり、地元の小学校の校長ビル・ヘイスティングスのものであることが判明する。彼の身柄は即座に確保されるものの、彼は現場にいた夢を見ただけで、実際にはその場所にはいなかったと話す。
ちょうどその頃、ツイン・ピークスの町ではインディアンの保安官トミー・“ホーク”・ヒルがログ・レディこと マーガレット・ランターマンから一本の電話を受けていた。ログ・レディは彼に、大切な何かが足りなくなっているから見つけ出すようにと助言する。
それをきっかけに保安官のホークはデイル・クーパー特別捜査官がツインピークスにいた当時の事件のファイルをかき集めることにする。
その間、デイル・クーパーと瓜二つの男がバックホーンで何かを企み、町を徘徊していた。逮捕されたばかりのビル・ヘイスティングスの自宅に押しかけ、彼の妻を銃で殺害。
その後、自分を裏切ろうとした仲間のジャック、ダリアと落ち合うと、彼らを次々と殺していく。ところが男はまもなく交通事故を起こし、逮捕されると、尋問室でFBI時代の仲間たちと再会する。彼は果たして本物のデイル・クーパーなのか。
ツインピークス・リミテッドイベントシリーズは難しい!
「マルホランド・ドライブ」、「インランド・エンパイア」、「ストレイト・ストーリー」などでお馴染みのデヴィッド・リンチ監督による、ファン待望の最新シリーズ。
それにしても懐かしいシリーズの復活ですね。ツイン・ピークスといえば日本でも昔ビデオレンタルで根強い人気を誇っていたのを思い出します。
当時、アメリカのTVドラマは今ほど人気がありませんでした。そんな中でも例外的な人気を誇っていたのがこのシリーズです。
デヴィッド・リンチワールド全開ともいえるダークで、奇妙で、難解で、気持ちの悪い物語で、この最新シリーズではエピソードによってはゾクゾクするだけでなく、大分ユーモアが入っているのがいい意味でサプライズでした。異臭に気づいて大騒ぎする天然ボケの女性とかツイン・ピークスの警察署で勤務する夫婦とか爆笑です。
ストーリーはデヴィッド・リンチ監督の作品ではすっかりお約束となっているナンセンスな会話や複数の出来事と世界が結びついてはまた離れていくオカルト要素満載のパラレルワールドに仕上がっています。
「ロスト・ハイウェイ」 や「マルホランド・ドライブ」ではあるものを境に複数の世界が広がり、その両方を行き来するといった設定になっていましたが、本作でもやはり同じ世界観を受け継いだエピソードがちらほらあります。
パラレルワールドをつなぐ鍵となるのはコンセントで、それを通じて向こう側の世界に迷い込んでしまうといったシーンが続き、あれが意味するのは一体何なのかを想像するだけでも時間がかかりそうです。
ストーリー上で大きな鍵を握っているのはデイル・クーパー、彼の幻覚、そして彼に瓜二つの男ドギーの三人です。三人ともカイル・マクラクランが演じていて、それが余計に話を複雑にしています。
デヴィッド・リンチ監督はぶっ飛びすぎているのと、一切ストーリーを分かりやすく伝えないので、どうしても話が複雑かつマニアックになりすぎる傾向がありますよね。
特にエピソード8はぶっ飛びすぎてて、セリフもほとんどない幻想シーンが続きます。それがあまりにもしつこいので、じれったくなったらエピソード8は丸々スルーしてもいいかもしれません。
視聴者の解釈に委ねるには、あまりにも演出が乱暴なときが多々あって、合わない人には合わないだろうし、意味不明の作品で終わってしまう可能性もあるでしょう。
あれで監督はどうやって演者たちに演技指導しているのか不思議ですね。そもそもキャストたちもどこまで監督の意図を理解しているのか分かったもんじゃないです。
それぐらい不可解な映画なのであまり深く考えずになんとなく感覚的に楽しむべきでしょう。なんだかよく分からないけど最後まで見てしまう。そうなったら最後デヴィッド・リンチワールドから出られなくなるかもしれません。
ツイン・ピークス The Returnは「ツイン・ピークス:リミテッド・イベント・シリーズ」としてTSUTAYAで視聴できます
ツインピークス・リミテッドイベントシリーズはキャストが豪華!
前シリーズから25年も経ったというのにほぼほぼオリジナルキャストを中心にキャスティングされています。さらにデヴィッド・リンチ監督のお気に入りともいえるナオミ・ワッツのほかにも「インランド・エンパイア」に出演した裕木奈江、アマンダ・セイフライド、モニカ・ベルッチ、ティム・ロスなどが名前を連ねています。
豪華なのはいいとして、あまりにも登場人物が多すぎて、一人一人の顔と名前を覚えるのが大変です。さすがにあんなに多くなくてもいいかなという気がしました。それぞれが話の中でどんな役割を担っているのかを理解するには何度も見直す必要がありそうです。
デヴィッド・リンチ監督自身も旧シリーズに引き続き、補聴器をつけた耳の遠いFBI捜査官ゴードン・コール役で登場します。
耳が聞こえないせいで、いつでもどこでも周囲が驚くほど大声で話す役柄で、監督自身お笑いキャラに徹しているのが面白いです。
いくつかのエピソードのエンディングではバンドが登場し、演奏しながらそのままエンドロールが流れる演出になっていました。エンディングソングもエピソードごとに変わり、それぞれがツインピークスの雰囲気にマッチした音楽になっています。
まとめ
過去のシリーズはかなり長かったですが、今回の「ツイン・ピークス The Return」は全18エピソードで完結します。もしこれが何シーズンも続くようなら話に付いていけなくて、イライラして途中で断念しているでしょう。その点については全18エピソードで完結してくれてよかったです。
あるインタビューによると、なんでもデヴィッド・リンチ監督は今後一切長編映画は撮らないと決めているそうです。商業的な映画を撮ろうとすると自分の好きなように撮れないんだそうです。そういう意味ではこの「ツインピークス・リミテッドイベントシリーズ」が彼の集大成となるでしょう。
25年の年月が流れても「ツインピーク」特有の気味の悪さと不可解さは健在です。カルト映画ファンなら必見ですね。
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