官能ドラマではなく普通の映画として見られる良質な群像劇。演技、ストーリーがしっかりしていて、ベッドシーンに頼っていない完成度の高い映画です。70点(100点満点)
牝猫たちのあらすじ
ネオンのきらめく池袋の繁華街をさすらい、呼び出された男たちと枕を交わす3人の女性。ネットカフェ難民、シングルマザー、不妊症とそれぞれ悩みを抱えながらも、好きでもない男性の前で素肌をさらし彼女たちはたくましく生きていく。
シネマトゥデイより
牝猫たちの評価
「止められるか、俺たちを」、「孤狼の血」、「凶悪」、「日本で一番悪い奴ら」、「サニー/32」、「彼女がその名を知らない鳥たち」、「凪待ち」、「ひとよ」でお馴染みの白石和彌監督の作品。
脚本、演技、映像が素晴らしく、十分に評価できるレベルの映画です。三人の風俗嬢を通して現代の日本社会を上手く反映させていて、ぜひ海外でも上映するべき内容です。
物語は、同じデリヘルで働く、訳ありな三人の女性を同時進行的に映していきます。一人はホームレスでネットカフェで夜を過ごし、もう一人はDV癖のある子持ちで、いつも息子をバイトの子守に預けて遊びに行ってしまい、最後の一人はやもめの老人客と深い関係になっていきます。
三人はそれぞれ癖のある客に翻弄され、客を通じて希望と絶望を感じながら逞しく生きていきます。お互いの本名も知らない三人をつなぐのは風俗店の狭い待合室だけ。ところがその場所に警察のガサ入れが入ると、三人はまたバラバラになり、それぞれの道を歩んでいく、というのがあらすじです。
話はテンポ良く進み、最後まで飽きないです。白石和彌監督は普段から他の作品でもしっかりベッドシーンを撮っているからか、ストーリー上で必然性のある男女の絡みのシーンをとても自然に使っていました。
キャスティングにもセンスの良さが感じられます。ヒロインを演じた三人の女優たちは美人すぎず、セクシーすぎず、人妻系風俗で働く場末感があって、かなりリアルです。それゆえに現実感があってよかったです。
また、脇役を固める俳優たちもすごくいいですね。前から気になっていたんですが、子守のバイトをしている青年を演じた松永拓野は将来名脇役になりそうな気配のする、いい俳優です。
顔と喋り方に特徴があって演技が自然。彼はドラマ「火花」でも意地悪なコンビニ店員を演じていましたね。
運転手役の吉村界人も才能を伺わせる演技を見せていました。とりあえず「はい、すいません」って謝るところとか、こういう奴いるよなぁ、と思わせるパフォーマンスでした。
店長、音尾琢真もお調子者の役を上手く演じています。女性従業員には腰が低く、男性従業員には横暴な態度を取るところなんか、あるあるですね。
笑い芸人トロサーモンの二人も出演しています。中でも村田秀亮の演技は安定感あります。
結局は官能映画だろうと、シリアスな映画だろうと、俳優たちの演技と台本が良ければ面白い作品になるんですね。特に官能映画はベッドシーンありきで作っていることが多く、ストーリーが穴だらけになりがちなのですが、この映画は珍しく色気と上質のストーリーが融合されていました。なかなか日本にはこんな映画ないです。
コメント
ここで70点台ランクインした作品は安心して観ることができますね。
掛け金不要の保険みたいなもんです。
本作と「恋人たち」もそうでしたが、リアルすぎて「これドキュメンタリー?」って思ってしまう。
僕は都心近くのマンションに住んでいるんですけど、帰宅時にご出勤のオネエさんをよく見かけるんですね、この映画見てから思わず声かけそうでコワイw
リアルですよねぇ。
セックスシーンを誤魔化さずに撮ることがこの手の話のまず基本だと思うので、そのリアルさに覗き見してる感じがしてドキドキしました。
新宿でもなく、渋谷でもなく池袋っていうのがまたリアルですね。
女の子たちはみんな細くてスタイル良かったですねー。
私が見かけるデリヘルらしき子は大半が小太りですw
デリヘルとか風俗を仕事にするってこの世を生き抜く為の最終手段な気がするから、結局あんな風な空虚な精神状態に陥るんだろうな、とは想像できました。
きっと自分の中にある底みたいのを見ちゃう感じなのでしょうか。
ほかの邦画もこれぐらい本気で男女を描いてくれるといいんですけどね