イ・ビョンホンとチェ・ミンシクが共演している残虐な連続殺人と無慈悲な復讐のストーリーです。迫力はあるものの、ストーリーが途中から大きく脱線するのがダメダメです。33点(100点満点)
あらすじ
国家情報院捜査官スヒョン(イ・ビョンホン)の婚約者の死体の一部が発見される事件が発生。極秘で捜査に乗り出したスヒョンは、真犯人の連続殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)を捕まえ、体の中にマイク付きのGPSチップの入ったカプセルを飲ませ解放する。そしてギョンチョルが犯行に及ぼうとするたびに現れ、アキレス腱(けん)を切るなどの残虐な制裁を加えていき……
シネマトゥデイより
文句
男が自分の婚約者を殺した犯人に執拗な仕返しをする韓国の復讐ドラマ。暴力シーンがリアルで、前半は面白いのに復讐モードに入ってからは急にめちゃくちゃな展開になる映画です。
女性の肌フェチの連続殺人犯がある日、元刑事の娘で、国家情報院捜査官の婚約者を殺したことから、拷問を受けては解放され、また捕まっては拷問を受ける、という壮絶なリベンジに遭う話です。
連続殺人犯は、一人でいる女性を車に乗せ、ハンマーなどで頭を叩いて気絶させ、体を切断して殺害する、という無慈悲でえげつない行為を楽しむサイコパスで、彼の残虐な行為の一部始終をこれでもかというぐらい見せられます。
そこまではまだ怖くて気持ち悪くリアルで良かったんですが、捜査官のスヒョンがサイコパス男を捕まえた辺りから、ストーリーが急におかしくなっていきます。
あろうことかスヒョンは犯人を殺害せず、GPSを飲ませて少し傷つけると親切にも彼を逃がしてやります。そしてまた男が犯行に及ぶと、GPSで居場所を突き止め、現場にまで駆けつけて暴行を加える、という面倒なゲームが繰り返されます。殺さずに逃がしてたっぷりと復讐を味わってもらう、というのが目的のようです。
しかしそのせいで被害者がどんどん増えていって、罪のない人々が次々と殺害されるという馬鹿みたいな状況に陥ります。スヒョンはそれでも全然いいんだそうです。だって婚約者と同じ苦しみを犯人に与えるのが最優先だから。国家のために働いているくせに市民のことは二の次っていうね。
それならそうと監禁でもして、ゆっくり煮るなり焼くなりしたらいいのにいちいち犯人を逃がすのが意味不明でした。GPSがあるから大丈夫みたいな、あの余裕がどこから来るのかが分かりません。
また、スヒョンの格闘技のレベルが高すぎて、途中から彼を演じたイ・ビョンホンがスティーブン・セガールに見えてきます。ほとんど武器も使わずにナイフや銃を持った相手に何度も勇敢に戦いを挑んでいく姿がアホらしかったですね。銃を使わないというのも彼のこだわりなんでしょうか。スヒョン、こだわり強すぎだから。
コメント
「チェイサー」でも凄惨な暴力描写があったが、今作について言うと、ストーリーの杜撰さを殊更残酷な暴力描写で誤魔化している感じ。
料理に喩えると、質の悪い食材に高価な調味料を多用してそれなりに食える物にしているが、調味料使い過ぎで味がしつこく単調というか。
何度も同じ様な復讐行為を繰り返すので、復讐物にとって重要な「カタルシス」が削がれている。
GPS食わせて何度も犯人に追い込みかけるって発想自体が幼稚。
復讐心に己を食われた人間が犯人以上の悪に堕ちる様を描きたいのなら、むしろ主人公を犯人の更生に献身的に努力する聖人にして、犯人を反省させて社会復帰させて仕事・家族も作らせた後に、それらを犯人と同じやり方で奪うくらいにした方が大人の鑑賞に耐える作品になったんじゃないかと。
質の悪い食材に高価な調味料を多用したっていうのは的を射ていますね。