自転車ロードレースのドーピングの実態を描いた衝撃作。世界最高峰のツール・ド・フランスで7連覇を飾った幻のロードレーサー、ランス・アームストロングの半生を描いた、プロスポーツのドロドロの裏側を覗ける物語。66点(100点満点)
疑惑のチャンピオンのあらすじ
20代にガンを患いながらも克服した自転車ロードレース選手ランス・アームストロング(ベン・フォスター)は、1999年から2005年に「ツール・ド・フランス」7連覇を達成する。ガン患者を支援する社会活動にも奔走し、世界中から尊敬される英雄だった。
一方、記録のために手段を選ばない勝利への執着はすさまじく、ある記者が彼にまとわりつく薬物使用疑惑をリサーチしており……。
シネマトゥディより
疑惑のチャンピオンの感想
「あなたを抱きしめる日まで」のスティーヴン・フリアーズ監督によるアメリカで一時期、自転車の世界における英雄的存在だったランス・アームストロングのドーピング物語です。
いかにランス・アームストロングがドーピングに手を染め、それを隠蔽し、パフォーマンスを向上させて、前人未到のツール・ド・フランス7連覇を成し遂げたかを分かりやすく、リズム良く見せています。
ランス・アームストロングは若くしてステージ3の精巣癌を患い、それを克服した超人的な逸話を持つ男だけに病気からの復活、そしてロードレースで新記録を塗りたてていく姿が世界中の多くの人々を魅了しました。
しかしその裏では薬の力に頼っていたという事実があり、それが発覚したことでそれまでのタイトルを没収されて一気に転落人生を送ることになります。
驚くべき点は、あれだけ長い間パフォーマンス向上のために様々な禁止薬物を摂取したというのにランス・アームストロングはたったの一度もドーピング検査にはひっかからなかったそうです。通算600回は検査をしたのに一度も陽性反応が出ないなんてことありますか?
そもそも検査のレベルが隠蔽のレベルに追いついていないっていうのがおかしいですよね。
検査するほうも隠すほうもイタチごっこのように技術を磨いていくから、陽性反応が出るほうが難しいみたいなことになっているのがバカバカしいです。そのせいでバレなければOKみたいな雰囲気になっているのが怖いですね。
それはまさにドーピング天国ともいえる状況で、業界全体が事実を隠すことに共謀していたことも自体を悪化させています。多くの人がアイドル選手として高い人気を博したランス・アームストロングの経済効果の恩恵を受けていたのは間違いないでしょう。
そういった一連のドロドロしたエピソードを知ってしまうと、正々堂々とか、フェアプレーとか、スポーツマンシップとかちゃんちゃらおかしくなってきますね。プロスポーツ自体に嫌気が差すかもしれません。名声と金が全ての世界です。
五輪でも毎回ドーピング問題が騒がれるけれど、そもそも最初からルールを守る気がない人たちと正々堂々やっても勝てるはずないんですよ。勝ち負けしか考えていないような美学のない人は勝つためには手段は選ばないし、勝ってたくさんのお金がもらえればそれで万事OKだから。
その辺は五輪やスポーツの大会をどのように捉えているかで大きく変わってきますね。日本人選手のように内容にこだわって美しく勝ちたいなんて思っている人たちはむしろ少数派でしょう。
どうせ100%クリーンな大会なんて実施できないんだったら、いっそのことドーピングOKの五輪を一度開催したみたらいいかもしれませんね。
むしろドーピングしないと出場できないことにしましょうか。”公平”にするために試合10分前にみんなに注射器が渡されて、「ダメですよ、ちゃんと打たないと」などと監視の目が入るとかにしてね。
男子は不自然な筋肉ムキムキの姿で参加し、女子は髭ボウボウで走り回り、ドーピングをやりすぎて大会中にバタバタ人が死んでいくみたいなことにもなりかねませんけどね。
そんでもってメダルの獲得数の横に死亡者数を表示して、「今年の中国の死亡者はいつもより少ないなあ」なんてことが話題になったりして。
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