ひょんなことから女性を殺害してしまった男が姿をくらませ、逮捕されるまでを描いた逃亡劇。映像がきれいで、ストーリーがドラマチックでスリリングな展開はあるものの、終盤クオリティーが落ちていく作品。44点(100点満点)
映画「悪人」のあらすじ
若い女性保険外交員の殺人事件。ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員、清水祐一(妻夫木聡)が真犯人として浮上してくる。しかし、祐一はたまたま出会った光代(深津絵里)を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。そして、次第に二人は強く惹(ひ)かれ合うようになり……。
シネマトゥディより
映画「悪人」の感想
「フラガール」でお馴染みの李相日監督のサスペンスドラマです。悪い女と悪い男が出てくるので、登場キャラクターたちを見るのは結構楽しいです。
特に殺害される満島ひかり扮する石橋下佳乃の人物設定が絶妙でしたね。あいつは悪い女ですよ。あれはタチが悪い。どれだけ悪いかというと、男を散々利用し、金を借りたり、自分本位に呼び出したりする女なんですが、約束の場所にタイミング良く別の本命の男性が通りかかると、約束していた男をほっぽって、お目当ての男のほうに付いていってしまうという暴挙に出たりします。
僕の住むブラジルにはあれぐらいのことなら平気でしてくる女がわんさかいるので、それほど驚きはしませんでしたが、待ち合わせの場所に取り残された彼のことを思うと、可哀相すぎて笑ってしまいました。
この映画の最大の見所はあのシーンだといってもいいぐらい、絶妙のシチュエーションを作り出していましたね。彼女に置いてけぼりにされた清水祐一はもちろん困惑して怒りを露にしますが、知らない男の車に乗り込んだ彼女を心配して、後をつけます。
そこでさらに面白い展開が待っているんですが、悪い女が好きな男もやっぱり悪い男で、車内で会話をしているうちにだんだん女のことが鬱陶しくなってきて、最後にはあろうことか車の外に文字通り女を蹴り出してしまいます。そこに清水祐一が登場し、女の身を案じて優しくしたのに悪い女はプライドが高いからか、お前の助けなんていらねえよと突っぱねてしまうのです。
そうこうしているうちに女は「お前に山奥に連れてこられて乱暴されたって言ってやるからなあ、私には弁護士の知り合いがいるんだからなあ」と脅しをかけるというぶっ飛んだ行動に出ます。清水祐一は女の思わぬ行動にあわてふためき殺害してしまう、というのが物語の流れです。
ここまではとてもスムーズに見事なサスペンス劇を描いていたのにいざ物語が逃亡劇になると急にリアリティーを失い失速します。まず一番気になったのが清水祐一が髪の毛を金髪にしていたことです。あんなにボソボソ喋る自己主張のない男が髪の毛で個性を出そうとするかなぁというのがひっかかったんです。あそこに明確な理由が全くないんですよ。
普通、事件を起して警察に追われている身の犯人が目立つ髪形で外を歩かないじゃないですか? 防犯カメラとかどこで誰に見られているかも分からないんだからまずは髪の毛黒くしようよ。あれで逃げてますって言われてもねえ。
それと、なんであの男は逃亡中に女と知り合ってホテルにしけこんでる余裕があるんですか? あの状況でよく興奮できるなあ。「悪人」じゃなくてただの「絶倫」じゃないですか。
行きずりの女、馬込光代(深津絵里扮)も男と一緒についていく理由がないじゃないですか。どこにそんなに惹かれたのか分からないんですよね。誰が一番悪人かって言われたら難しいけど、誰が一番アホかってなったら間違いなくあの女ですよ。
コメント
いつも楽しく拝見しています。
キレキレでさすがです!
この監督の最新作「怒り」、周りで評判がいいです。邦画ですが、機会があればぜひ文句をお願いいたします!
レトリバーさん
見る機会がありましたら、レビューしますね。ありがとうございます。