「青の帰り道」、ドラマ「新聞記者」、「新聞記者」、「ヤクザと家族」の藤井道人監督による自主製作映画の製作に意欲を燃やす俳優、監督、スタッフたちの夢と現実を描いた青春ドラマ。演技とストーリーが自然でクリエイターや映画製作に関わっている若者におすすめしたい一本。69点(100点満点)
7s [セブンス]のあらすじ
サワダは自主映画でインディーズ映画祭のグランプリを受賞し、その賞金で映画を撮ることに。アルバイト先の居酒屋で出会った小劇団のメンバーに出演してもらい、7人の天才詐欺集団が世のために詐欺を働くという映画『7s』は、撮影が進むにつれて俳優の遅刻や降板、スタッフ同士のいざこざなどトラブルが続出。さらには撮影したデータが消えてしまい、『7s』は未完のまま撮影中止に追い込まれる。そして3年後……。
シネマトゥディより
7s [セブンス]の感想
インディーズ感漂う内容もさることながら、それほど知られていない俳優たちを上手くキャスティングしてこれだけの完成度の映画を作れているのはすごいです。
映画祭でグランプリを受賞した監督が、バイト先で知り合った劇団員を集めて新作を撮る、というただそれだけの話を群像劇風にして描いていて、アイデアとセンスを感じさせます。
最初は意気揚々と撮影を始めるクルーたちが徐々に自分たちの日常の都合に惑わされて映画製作に打ち込めなくなっていく様子がリアルでした。すると撮影現場の雰囲気は次第に悪くなり、やがてスタッフが姿を消したり、俳優たちが現場にこなくなったりします。
しっかりとギャラが支払われるならばまだしも自主製作映画だから、メンバーのモチベーションもバラバラで、ほかのことを優先していく人たちが現れる中、なかなかやる気を保つのも大変です。挙句の果てにはメインのスタッフが一人抜けることになり、それを機に映画のデータが何者かによって削除されてしまうアクシデントに見舞われます。
結局新作映画の話は未完のままお蔵入りになり、それぞれがそれぞれの退屈な日常生活へと戻っていく、というのがおおまかなあらすじです。
映画製作に関わっている人からすれば、これこそが人生のターニングポイントとなる作品だと大きな意気込みを抱くこともあるでしょう。それが大人の事情でおじゃんになる悲しみといったらないですね。そんな作品があると、監督や出演者たちなら「あの作品さえ完成したら、今頃俺はもっと成功していた」なんてことをふと思い出したりするのでしょう。
これは何も映画だけに限ったことじゃないでしょう。「あのとき上手くいっていたら今頃は、、、」みたいな悔しさは誰にでもあるんじゃないでしょうか。そんな人生の岐路を感じさせる演出でした。
出演俳優たちはそれぞれいい味出していました。演技も自然だし、過剰演出されていないのがいいです。特に監督役を担当したアベラヒデノブはとてもいい俳優ですね。なんでもっとメジャーな映画に出ていないのか不思議です。やっぱり隠れてるんですねえ、実力ある俳優が。もっと認められていないことが逆に悲しいけど。
アベラヒデノブ自身、監督業もやるそうで、自分のユーチューブチャンネルも持ってて、そこで作品を紹介したりしています。まさにこの映画と実生活がマッチしてるんですね。
僕が望むのは、こういう一定のクオリティーをクリアしたリアルな映画を撮る監督、スタッフ、俳優たちが今のメジャー映画のスタッフたちと入れ替わってくれることです。
アホみたいな演技しかできない俳優たちやくだらない映画ばかり撮る監督たちに多額のギャラが支払われるのではなく、本当に実力のある人たちがお金持ちになってくれたら嬉しいんですけどね。この映画でも描かれていたけど、みんなカツカツで生活しているんだろうなぁ。
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