「ローマの休日」の脚本家ダルトン・トランボが冷戦中、共産主義者であることを理由にハリウッドとアメリカ政府から受けた迫害を数々をつづる起死回生の物語。トランボの過去の作品の製作裏話が分かり、また見返したくなる一本。72点(100点満点)
トランボ・ハリウッドに最も嫌われた男のあらすじ
『恋愛手帖』で第13回アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、着実にキャリアを積んできたダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)。しかし、第2次世界大戦後の冷戦下に起きた赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒否したことで投獄されてしまう。釈放後、彼は偽名で執筆を続け、『ローマの休日』をはじめ数々の傑作を世に送り出す。
シネマトゥディより
トランボ・ハリウッドに最も嫌われた男の感想
「ローマの休日」を始め「スパルタカス」など歴史的超大作の脚本家ダルトン・トランボの伝記ものです。
特に「ローマの休日」は元祖ラブコメディともいえる、日本でもお馴染みの作品で、見たことがある人も多いと思います。そんな不朽の名作の脚本家が実は自分の名前を伏せて、別人のクレジットで作品に参加していたというのが驚きでした。
というのも冷戦当時のアメリカでは共産主義者に対して風当たりが強く、共産主義の思考を持つ人たちはみんなロシアのスパイだなどと言われて糾弾されていたからです。俗に言う赤狩りですね。
ハリウッド映画は影響力が強いと考えられていたことから、共産主義者が映画を通じて国民を洗脳するのではないかと恐れられていたようで、ダルトン・トランボを含む大勢の脚本家たちは投獄されてしまいます。
出所後も思うように活動ができなくなったダルトン・トランボは貧困に苦しみながらも、B級映画の脚本を小さな映画製作会社向けに偽名で書いてなんとか食いつなぐような生活を送ります。それでも彼は才能をいかんなく発揮し、作品が次々と話題になるうちに大手製作会社も彼のことを無視できないようになってくる、というのがおおよそのストーリーです。
ジャンル的には差別映画に分類できそうです。当時のアメリカの共産主義者アレルギーは尋常じゃなく、どれだけ政府や国民が共産主義を目の仇にし、恐れていたかがよく分かり、アメリカが歴史的にいかにして架空の敵を退治することをスローガンに掲げて、ここまできたことに気づかされますね。
当時の赤狩りが現在ではテロとの戦いだったり、イスラム教徒に対する憎悪に置き換えられているだけで、根本的なことは何も変わっていませんよね。ドナルド・トランプのような政治家が多くの人々の支持を得ているのもアメリカ人のメンタリティーが成長していないなによりの証拠です。
ただ、どれだけ苦境に立たされても、ダルトン・トランボのように成功する人は成功するんですね。なにがすごいってジャンルを問わず、どんな種類の映画の脚本も書けることで、彼の作品群を見てみてもそのレパートリーの多さに驚かされます。それにお風呂に浸かりながら、たった数日で何本もの脚本を書きあげてしまうようなあの創作意欲がすごいです。
実際のところはどうだったのかは分かりませんが、少なくとも本作では彼の才能が差別に打ち勝ったともいえるような描写がされていました。そういう部分は現代の脚本家、小説家、新聞記者といった全ての物書きたちに勇気を与えるんじゃないでしょうか。
彼を支えた家族も偉いですね。ストーリー上では描かれていないけれど、ダルトン・トランボは刑務所から出所後アメリカを出てメキシコに移住したそうです。自分の国を追いやられ、家族を連れて海外でまた一から生活をやり直す苦労といったら相当なものだったと思います。
この映画を見てから、「ローマの休日」を見たらまた違った感動と喜びがありそうです。さっそく見直してみようかなぁ。
コメント
赤狩り、って名前のマンガを読んで
このトランボって作品を知りました
赤狩りのほうが詳しく書いてますが
やっぱり映像化してる映画のほうが感情移入できました
最後は泣きました
こんな映画こそアカデミー賞とって欲しかったです
物書きの鏡みたいな男でしたね。