人気シリーズ「ロッキー」のスピンオフ作品で、ストイックさの欠片もなく、適当に練習している奴がなぜか世界タイトルに挑戦できる、ボクシングをなめきった映画。ボクシング映画史上最低レベルの一本です。10点(100点満点)
クリード チャンプを継ぐ男のあらすじ
ボクシングのヘビー級チャンピオンであったアポロ・クリードの息子、アドニス・ジョンソン(マイケル・B・ジョーダン)。さまざまな伝説を残したアポロだが、彼が亡くなった後に生まれたためにアドニスはそうした偉業を知らない上に、父との思い出もなかった。それでもアドニスには、アポロから受け継いだボクシングの才能があった。そして父のライバルで親友だったロッキー(シルヴェスター・スタローン)を訪ねてトレーナーになってほしいと申し出る。
シネマトゥディより
読者のRickさんのリクエストです。ありがとうございます。
クリード チャンプを継ぐ男の感想
「フルートベール駅で」、「ブラックパンサー」のライアン・クーグラー監督のスポ根映画で、かなりのひどい代物です。なんでしょう、あの登場人物たちとストーリーの不真面目さは。もっとちゃんとやれって言いたくなる箇所が多すぎて、目も当てられないほどのレベルでした。
ハリウッドのボクシング映画の最大の問題点は、ボクサーたちの外見的な格好良さと強さしか描いていないことです。そのため俳優たちはボクサーの体というより、ウェイトトレーニングで作り上げただけのボクシングには到底不釣合いな筋肉を自慢げに見せるだけで終わってしまいがちです。
練習、食事、生活習慣に対するストイックさやボクサー特有の苦しみなどを描くこともほとんどなく、アドニスなんて世界チャンピオンを目指している割りにはロードワーク中にふらっとナイトクラブに入って、舞台で歌う女に見惚れたりして、優先順位が女>音楽>ボクシングぐらいの程度の男でした。
アドニスは女とデートに行っても脂ギトギトのハンバーガーみたいなものを平気で口にしてるし、朝からコーンフレークに牛乳かけて食べてるぐらいで、体作りにおける最も重要な食事すらも気にしていないレベルのアスリートなのが笑えました。
そんな男が試合に出れば勝ち続け、物語の中では数試合しかしていないのにいつのまにか連戦連勝のボクサーになっていて、あろうことか世界タイトルマッチにまでこぎつけます。
相手の男は無敗の王者で刑務所に服役していたバッドボーイ。またこいつはこいつで不真面目な男で、タイトルマッチの記者会見で相手のボクサーをぶん殴り、しかしそんなことをしてもこの世界の中ではライセンスを剥奪されることもありません。
アドニスもまたプライベートでラッパー風の男をぶん殴り逮捕されますが、それでも世界タイトルマッチは普通に出場できます。あそこまでなんでもありにするなら、ボクシングの試合中に凶器とか使っても面白かったんですけどね。フォークとかで目潰しして、レフリーに蹴りいれたりしてね。
しかし登場人物の中でも一番中途半端だったのはアドニスではなくむしろロッキーです。この映画はロッキーの映画にしたいのか、それともアドニスの映画にしたいのかがどっちつかずでしたね。
レストランを経営するロッキーは最初、かつてのライバルの息子であるアドニスにボクシングを指導するのを拒んでいましたが、ある日突然教えることにします。あの辺の心変わりの理由が何も用意されておらず、ロッキーともあろう伝説のチャンプが、ただの気まぐれな男に成り下がっていました。
また、誰がこんなアイデアを考えたのか、ロッキーが物語りの終盤に重病にかかります。それで化学療法を受けなくてはならなくなり、それでも治療よりボクシングを優先させるという男気を強調したサブサブのオチが待っています。
そのせいで本当だったら練習に集中しなくちゃいけないはずのアドニスが今度はロッキーの様態を心配して看病する側に回ってしまって、挙句の果てには病室でシャドーボクシングをしたり、病院の階段でランニングをするという始末でした。あんなことしたら看護婦に怒られるって。
コメント
映画男さんの文句を見る前に、観てきちゃいました。
正直ストーリー自体にはそこまで引きこまれませんでしたねぇ。
いろいろ端折りが多かったり、試合数が少なかったり、
ロッキーシリーズをまともに見ていないから引き込まれないっていうのもあるかもしれませんが。
ただボクシングド素人の私から見たら、少ないながら試合シーンは迫力があって良かったです。
非常にベタな話ですが、引っ張って引っ張って最後の試合の最終ラウンドであのテーマが流れる演出には熱くなりましたね。
ベタな好きな人にはうってつけかもしれません。
Rickさん
コメントありがとうございます。確かにベタベタでしたね。あのテーマを流すための映画みたいでした。
映画男さん
こんにちは。
いつも拝読しております。
自分はロッキーシリーズは大体観ていますが、
恐らくこの映画はファンの間で賛否が分かれる様な氣がします。
スタローン以外のシリーズ常連俳優は誰も出演しておらず、
こうも色々設定を変えられたら、スピンオフというより
「ロッキーシリーズのパラレルワールド」といった感じでした。
これでもし試合シーンに迫力が無かったらボクシング作品としてはとても見られたものではないと思います。
また来ます、
ありがとうございました。
t-g-m
t-g-mさん
コメントありがとうございます。ロッキーシリーズは男心をくすぐるシリーズでしたが、今回のはありえない完成度でした。試合のシーンも残念ながら僕には迫力はなかったですね。
最高に楽しい酷評、読んでいてすがすがしいです。
製作費35億円、全世界興収170億円。
不思議ですね。
「ロッキー」はさ、1がオスカー撮ったレベルの良質なヒューマンドラマで、2以降は単なるエンタメの商業映画。ただ、1で確立した「ロッキー・バルボア」という男の魅力の残り香で「ファイナル」まで持って行った感じ。多分、1が無くて2から始まっていたら、凡百のB級映画に過ぎなかったと思う。
んで、「クリード」に欠けているのは要するに「ロッキー1」なんだよね。
ものすごく的を射ている意見だと思います。
作家の池澤夏樹が「人種や身分・家柄といった旧来の恋愛障害がなくなった現代では恋愛小説を書くのが難しくなっている。」と評していましたが、昨今LGBT系の恋愛映画が量産されるのは、現代では「同性愛」ぐらいが唯一残された「恋愛障害」だからでしょうか?
ただどの作品を見ても思うのが、主人公カップルが美男美女ばかりで、ストーリーの粗さを「イケメン要素」で誤魔化しているものが多いような気がします。
ウド鈴木✕出川みたいなカップルで、泣かせられる様なLGBT映画が取れたら本物だと思うのですが。
これはボクシング映画ですけど、最近の恋愛映画確かにつまらないですねぇ。
ボクシングの作品は、レイジングブル、ミリオンダラーベイビー、ザ・ファイター、百円の恋などがありますが、どれが一番よくできていると思いますか?
上記以外の作品のレビューを見たときに、本物の選手を起用していて、戦うシーンは様になっていて、リスペクトや愛情が感じられたとあったので気になってしまいました。
全部見たけど、ちゃんと覚えてるの百円の恋ぐらいです。百円の恋は面白かった