登場人物の女性たちがひたすら殴られたり、刺されたりするだけの気持ち悪いホラーで、オチがしょうもなさすぎる興奮度ゼロの映画。これを見て楽しんでいる人の神経を疑いたくなります。11点(100点満点)
マーターズのあらすじ
1970年代のフランス、何者かに拉致監禁され、長期にわたり虐待を受け続けた少女リュシー(ジェシー・パム)は自力で逃げ出し、傷だらけの状態で発見される。養護施設に収容された彼女は心を閉ざしていたが、同年代の少女アンナ(エリカ・スコット)にだけは心を許していた。15年後、リュシー(ミレーヌ・ジャンパノイ)は自分を監禁した相手を発見し、猟銃を手に犯人宅を訪れる。
シネマトゥディより
読者のセプさんのリクエストです。ありがとうございます。
マーターズの感想と評価
パスカル・ロジェ監督によるエグいシーンばかりを集めたスプラッター映画。ホラーの中でも最もしょうもない類の作品です。
登場人物をとにかく流血させて、体の一部を切断したり、刺したりして、「どうだ、怖いだろ?」と監督が得意気になるタイプの作品です。
それはちょうどセクシーな女優のお色気シーンばかりを集めて男を興奮させたり、子供を病気にさせてお母さんたちを泣かせたりするのと同じ手法ですね。
本当に頭のいいホラー監督は映像だけでなく、心理を揺さぶるような恐怖を与えようと努力しますが、この監督にはそれが無理だったのでしょう。この作品以降、全く名前を聞かないことからも一発屋としてキャリアが終わったんでしょうか。
物語は初めから終わりまでとにかく女性を傷つけまくる内容になっています。カッターで背中を切ったり、剃刀で腕を切ったり、気絶する女性を叩き起こしてまた殴る、という常人ではとても目を開けていられないような映像をこれでもかというぐらい用意しています。
しかし両目を塞ぎたくなるのは別に怖いからじゃありません。痛くて、気持ち悪いからです。そこを監督が分かってないとダメです。
背筋がぞっとする感覚じゃなくて、嫌いな奴の顔を長時間見る感覚なのです。ホラー映画を見る前に僕はいつもひとつのお願いをします。「お願いだから怖がらせてよ」と。だけどほとんどのホラー映画は怖くないからホラー映画自体があまり好きになれないのです。
なんですか、あのオチは? 散々女性を監禁して、殴って、全身の皮膚をはいで、「死後の世界が見たかった」って。馬鹿じゃないの。そんなに死後の世界に興味があるなら、お前が自分で死ねばいいじゃん。なんで人づてで感想聞こうとしてるの?
「ねえねえ、死後の世界ってどんなだったの?」
「いやあ、ダイナミックでしたねえ」
「やっぱり? でどんなふうに?」
「とにかく、青っぽかったですね、いや、緑だったかな」
どうせこんな会話にしかならないでしょ。なによりリアリティーがないんだよ、リアリティーが。あの世界に警察とか医者は一人もいないんですか?
なんで監禁されてた全身傷だらけの女性を主人公が見つけたのに自分で治療しようとするんだよ。まずは救急車呼ぶだろ。あれだけ切り傷だらけだったら、バスタブに入れたらヒリヒリ半端ないじゃないですか。登場人物みんな馬鹿じゃないですか。
コメント
まずは『マーターズ』のレビュー、ありがとうございました。
自分の好みでない映画を鑑賞し、さらにレビューを書くとなると大変な労力を要するのではないかと思います。
お疲れ様でした。
以下、少し長くなりますが、『マーターズ』について自分考えることを述べさせてください。
『マーターズ』は表面的な流れだけ追うと、少女が延々と惨たらしい拷問を喰らい、皮をはがれ、死を迎えるだけの映画であるように受け取れます。
しかしそれは作り手の巧妙なミスリードです。
『マーターズ』は宗教についての映画でもなければ、死後の世界についての映画でもありません。
本質を捉え損なえば、意味のわからない映画になります。
マドモアゼルが自決する前、従者に「疑いなさい」と一言言ってますよね?
「疑いなさい」と言ったということは彼女自身疑っていることに他なりません。疑っていない人間が他人に疑えというわけがないですから。
では何を疑っているのか。
当然文脈から彼女が疑っていたのは死後の世界の存在ということになります。
死後の世界の存在を探る組織の首領たる彼女がなぜそれを疑うようになったのか。
これは直前に彼女がアンナから聞き出した言葉が鍵となります。
ではアンナは今わの際に何といったのか?
それは、、、
というふうに与えられたヒントを一つ一つ拾っていけば、この作品がどういう映画なのか、きちんと理解することは可能です。
リュシーはなぜ自ら命を絶ったのか、アンナはどうしてあれほどの拷問を受け続けたのか、マドモアゼルはアンナから聞き出した言葉とは何か、マドモアゼルはなぜ自決したのか、そういった疑問に答えるためのヒントは作中きちんと示されています。
ただそれがあまりにさりげなくて見落としてしまいがちですけどね。
>なんで監禁されてた全身傷だらけの女性を主人公が見つけたのに自分で治療しようとするんだよ。まずは救急車呼ぶだろ。
あのときのアンナの行動は理に適っていますよ。
屋敷の中にゴロゴロと死体があり、自分の指紋がそこらじゅうにベトベトついていて、真犯人である親友が自死している状態で救急車や警察を呼んだらどうなるか、言うまでもありません。アンナ自身が殺人犯として警察に逮捕されるでしょうね。
彼女は彼女なりに精一杯の治療行為をしようとしただけ、それが間違った知識であったとしても、です。
せぷさ
リクエスト&コメントありがとうございます。アホなんで、深読みしないと分からない映画はどうも苦手です。
すいません、誤字があったので、訂正・削除をお願いします。
訂正しました。
いつもブログ楽しく拝見しています。
>あのときのアンナの行動は理に適っていますよ。
いや、あれだけパニクる状況だったら逆に理に適った行動はとれないのでは。。と思います。私も救急車呼べよと思いました。
しかし気持ちよく文句リクエストに応えたら、ガッツリダメ出しされてしましましたね。。映画男さんに何を求めていたのでしょうか。
モチスイさん
擁護してくださってありがとうございます。実際読者からよくダメだしされます。
>映画男さん
自分は映画男さんのことをアホだと思ったことは一度もないですけどね。
深読みはされないとのことですが、たまにはそれもいいんじゃないでしょうか。それも映画の楽しみ方の一つです。
>モチスイさん
>映画男さんに何を求めていたのでしょうか。
何を求めてたかって、もちろん映画男さんと『マーターズ』という映画について論じ合うこと、ですよ。
一つの映画について、あーでもない、こーでもないと自分の考えをぶつけ合うのって楽しいことだと思うんですけれど、モチスイさんは違いますか?
それとも映画男さんのダメ出しに異を唱えることは許されないことなのでしょうか?
映画男さんってそんなに器量の小さい人間だとは思わないけどなぁ。
せぷさん
反対意見も賛成意見も大歓迎ですよ。モチスイさんのような後ろ盾コメントも素敵ですし、みんなで言いたいこと言えばいいと思います。
はじめまして。
時々、楽しく拝読しています。
果たしてこの映画がホラー映画と呼べるのかどうかわかりませんが、
「ミネハハ 秘密の森の少女たち」
原題: The Fine Art of Love : Mine Ha-Ha
監督: ジョン・アーヴィン
をリクエストさせてください。
よろしくお願いします。
ぽぽちゃんさん
リクエストありがとうございます。
この映画は自分なりに最も後味の悪い映画として評価しています。(第二位はファニーゲームかな)
まあ同監督の他の作品を見れば、この作品が異常に残酷なのは解ります。
低予算で興行収入上げるには、インパクトを強く与える必要があると言う事ですよね。
まあ内容の全くないsawシリーズ後半よりは大分ましだと思います。
うまそうさん
コメントありがとうございます。sawシリーズも残酷なだけで、ひどいですよね。
「マーターズ」を初めて見たとき衝撃的すぎ。ショッキングの連続で(>_<)でも怖いモノ見たさで頑張って見ました。
残酷さと、リュシーとアンナの友情や、哀しみが、救われなさが気になって……深いモノを勝手に感じてしまいました。悪くない映画でした。
(私にとって)後味悪い映画は、例えば、クリストファー・モラハン監督/ポール・マクガン主演の「背徳の仮面」
どんより嫌な気持ちに……[溜息]
当時若かったからか引きずりましたね。